私は昔から、駐車場ではできるだけ端に停めるようにしています。
理由は単純です。
以前、ドアパンをされたことがあるから。
買って半年も経っていない車でした。
スーパーから戻った時、助手席側に大きな傷が入っていて、相手は逃げていました。
修理代は十数万円。
でも一番腹が立ったのは、傷よりも、
「どうせバレない」
みたいな、その雑な感覚でした。
だからそれ以来、私はなるべく人の少ない場所に停めています。
その日も、GW中で混雑していたとはいえ、駐車場は350台以上停められる大型施設。
なのに、空いている場所は山ほどありました。
私はいつものように、一番端のエリアへ停車。
左右どちらも空いている場所を選び、買い物へ向かいました。
「これなら安心だろ」
そう思っていました。
……30分後。
戻ってきた私は、思わず足を止めました。
隣に、軽自動車がぴったり停まっていたんです。
しかも、かなり寄っている。
「なんで?」
思わず声が出ました。
周囲はガラガラです。
他にも何十台分も空いている。
なのに、わざわざ隣。
しかも頭から突っ込むように停めていて、運転席側との距離も近い。
嫌な予感しかしませんでした。
すると、近くで子どもの声がしました。
「ママー!降りるー!」
次の瞬間。
バン!!
嫌な音が響きました。
軽自動車の後部ドアが、私の車に直撃したんです。
私は反射的に駆け寄りました。
すると母親らしき女性が、面倒そうな顔でこちらを見ました。
「あー……」
謝るのかと思った。
でも違いました。
「子どもなんで」
それだけ。
私は一瞬、言葉を失いました。
「いや、傷入ってますよね?」
そう言うと、女は露骨に不機嫌そうな顔をしました。
「そんな高い車乗ってるなら、傷くらい気にしないでくださいよ」
……は?
さらに、
「神経質すぎません?」
とまで言われました。
さすがに頭にきました。
でも、私は怒鳴りませんでした。
その代わり、静かにスマホを取り出しました。
「え?」
女の顔が変わります。
私は車内のドラレコ映像を再生しました。
そこには、子どもが勢いよくドアを開け、母親がそれを見ていた映像が、しっかり映っていました。
さらに。
ぶつけた直後、女が車の傷を確認してから、
「いいから早く行くよ」
と子どもを急かしている声まで、録音されていたんです。
周囲にいた人たちの空気が、一気に変わりました。
さっきまで強気だった女も、明らかに焦り始めます。
「いや……その……逃げるつもりじゃ……」
でも、もう遅い。
私は静かに言いました。
「警察呼びますね」
その瞬間、女の顔色が変わりました。
結局。
警察、保険会社、施設管理会社まで来る騒ぎになりました。
そして判明したのは、その女性。
過去にも別の駐車場で、ドアトラブルを起こしていたそうです。
保険会社の担当者は、ため息混じりに言いました。
「またですか……」
女は最後まで、
「子どもがやったことなのに」
とブツブツ言っていました。
でも、担当者の一言で完全に黙りました。
「子どもではなく、監督していた保護者の責任です」
その瞬間。
周囲の空気が、完全にこちら側についたのが分かりました。
後日、修理代と代車費用は全額負担。
さらに、施設側からも厳重注意を受けたそうです。
私は今でも、できるだけ端に停めています。
でも最近、少し思うんです。
本当に怖いのは、運転が下手な人じゃない。
“人に迷惑をかけても、悪いと思ってない人”
なんだって。