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新幹線で舌打ちしながら無理やり通る男→PCにぶつかったのに逆ギレ→後ろの席の一言で空気が一変
2026/03/16

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新幹線に乗るとき、私はよくパソコンを開いて仕事をする。移動時間を無駄にしたくないからだ。その日も同じだった。窓際の席はすでに埋まっていて、私は通路側。テーブルを出し、ノートPCを開き、静かに資料をまとめていた。

車内は平日の午後らしく落ち着いていた。キーボードの音と、新幹線特有の低い走行音が混ざるだけの静かな空間。そんな空気の中、突然、隣の窓側の男がガタンと立ち上がった。

次の瞬間だった。

男は何も言わず、そのまま体をこちらにねじ込むようにして通ろうとしてきた。
「すみません」もなければ、軽く会釈すらない。
しかも、イラついたように舌打ちまでしている。

そして――

男の肩が、私のノートPCにぶつかった。

画面がガクッと傾き、テーブルの上でPCが滑る。思わず手で押さえたが、心臓が一瞬ドキッとした。

私は思わず口を開いた。

「ちょっと、今PCぶつかりましたよ」

男は通路に出る途中で振り返り、明らかに不機嫌そうな顔でこちらを睨んだ。

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「通路側でパソコンやってる方が邪魔だろ」

その言い方が、あまりにも当然のようで一瞬言葉に詰まった。
だが、すぐに違和感が込み上げてきた。

私は落ち着いて言った。

「通るなら、普通“すみません”って言いません?」

新幹線では、窓側の人が出入りする時、隣の人に一言声をかけるのが普通だ。
少なくとも、舌打ちして体を押し込むような通り方は見たことがない。

だが男は鼻で笑った。

「だから舌打ちしてんだよ」

その瞬間、車内の空気がピリッと張り詰めた。

さっきまで誰も気にしていなかった周囲の乗客が、こちらを見始める。
前の席の人、通路を挟んだ向かいの席の人。何人もの視線が集まっているのがわかった。

私はPCの画面を元の位置に戻しながら、もう一度だけ言った。

「ぶつかったのはそっちですよ」

男は何も言わず、通路に立ったままこちらを睨んでいる。

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まるで、こちらが悪いと言わんばかりの顔だ。

そのときだった。

後ろの席から、静かな声がした。

「いや、それは違うでしょ」

振り返ると、スーツ姿の男性がこちらを見ていた。

「今ぶつかったの、あなたですよ」

男の表情が一瞬だけ変わる。

さらに、通路を挟んだ向かいの席の女性も口を開いた。

「普通は“すみません”って言いますよね」

別の乗客も小さくうなずいた。

それまで黙っていた車内の空気が、ゆっくりと変わっていくのがわかった。


さっきまで私に向いていた視線が、今度は男に集まっている。

男は口を開きかけたが、言葉が出ない。

誰も大声を出しているわけではない。
でも、静かな車内だからこそ、その空気ははっきり伝わる。

しばらくの沈黙のあと、男は小さく息を吐いた。

そして、ぼそっと言った。

「……すみません」

その声は、さっきの強気な態度とはまるで違っていた。

男はそれ以上何も言わず、通路から席へ戻った。
周囲の視線を避けるように座り、スマホを取り出して画面を見始める。

車内は再び静かになった。

私はPCの角度を直し、もう一度キーボードに手を置く。
後ろの席の男性と一瞬だけ目が合い、軽く会釈された。

向かいの席の女性も、少しだけ笑っている。

新幹線の車内では、知らない人同士が隣り合う。
だからこそ、お互いに少しだけ気を使う。

「すみません」

たったそれだけの一言で、ほとんどのことはうまくいく。

改めてそう感じながら、私は静かに作業を再開した。

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