その日、私は朝からスープを見ていた。
鶏ガラを炊き、泡をすくい、白く濁っていく鍋をじっと眺める。
うちの看板は鶏白湯ラーメン。
派手な店ではない。
駅前でもない。
それでも、わざわざ車で来てくれる常連さんがいる。
だから駐車場は命だった。
店の前に数台分しかない。
一台でも埋まると、昼の回転に響く。
その大事な一台分に、見知らぬ車が停まっていた。
開店前からずっと。
ナンバーに見覚えはない。
店内に入ってきた客もいない。
私は最初、少し待った。
「すぐ戻るのかな」
そう思いたかった。
でも三十分経っても、持ち主は現れない。
一時間経っても、ドアは開かない。
その間に、常連の佐藤さんが来た。
車を停められず、店の前で申し訳なさそうに手を振った。
「今日はまた来るわ」
その一言で、私の中の鶏白湯が一気に煮立った。
いや、鍋ではない。
私の心だ。
無断駐車の何が腹立つかって、本人は「ちょっとだけ」のつもりで済ませるところだ。
でも店側からすると、その「ちょっと」で一人の客が帰る。
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