ドアを開けた瞬間、私は固まった。
玄関の内側ではなく、外側に白い紙が貼られていた。
茶色いテープで、妙にきっちり。
そこには、こう書かれていた。
「毎晩の話し声で眠れません。これ以上続くようでしたら管理会社へ報告します。」
一瞬、意味がわからなかった。
話し声?
うち?
私はずっと独身だ。
彼氏を連れ込んだこともない。
友達を夜中に呼んだこともない。
むしろ仕事が終わったら、コンビニ弁当を買って、風呂に入って、ベッドに倒れるだけの生活をしている。
人を招く余裕なんてない。
部屋にいるのは私と、洗濯物の山だけだ。
なのに、隣人は毎晩眠れないと言っている。
しかも「これ以上続くようでしたら管理会社へ報告します」ときた。
丁寧な文面なのに、圧がすごい。
まるで私の部屋で深夜の宴会でも開かれているみたいだった。
私は紙を見つめたまま、じわじわ腹が立ってきた。
「いや、誰とも喋ってませんけど?」
そう思いながら部屋に入った。
鍵を閉め、バッグを置き、スマホを見た。
その瞬間、胸の奥が少しだけ冷えた。
最近、私はwakooで知り合った人と毎晩通話していた。
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