その夜、私は焼き鳥を食べに行くつもりだった。
仕事終わり。
駅前の路地に、赤い提灯がぼんやり揺れていた。
外は少し湿った空気で、炭火の匂いが鼻をくすぐる。
同僚が言っていた。
「あそこ、焼き鳥だけは本当にうまい」
その一言に釣られて、私は友人と店の前まで来た。
友人は車で来ていた。
だから飲めない。
私は軽く飲むつもりだったが、友人は焼き鳥と烏龍茶で済ませる予定だった。
ところが、入口の前で足が止まった。
白いボードに、大きく書かれていた。
「当店は呑み屋です」
その下には、さらに強い文字。
「必ず全てのお客様にお酒のご注文をしていただきます」
私は一瞬、読み間違えたかと思った。
全てのお客様。
つまり、飲めない友人も含まれる。
「水だけでいい」
「我慢する」
「焼鳥が美味しいと聞いた」
そういう理由は一切受け付けないらしい。
最後には、なかなかの一撃があった。
「どうぞ他店へ行かれてください」
友人が小さく笑った。
「俺、入店前に戦力外通告されたんだけど」
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