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事故で足が不自由になった妹を、 俺はずっと一人で支えてきた。 ある日、妹が泣きながら言った。
2026/06/03

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事故で足が不自由になった妹を、俺はずっと一人で支えてきた。

両親は数年前に他界した。

だから妹を守れるのは俺しかいない。

病院への送り迎え。

食事の準備。

リハビリの付き添い。

全部俺の役目だった。

大変じゃないと言えば嘘になる。

それでも後悔したことは一度もなかった。

ある夜。

妹がぽつりと言った。

「私、お兄ちゃんの負担にしかなってない……」

泣いていた。

肩を震わせながら。

俺は妹を抱きしめた。

「馬鹿なこと言うな」

「お前は俺の一番大切な家族だ」

「俺がお前を守る」

妹は少し泣いて、

そして安心したように笑った。

その顔を見て、俺もようやく安心した。

「腹減っただろ?」

「今日はお前の好きなオムライス作るから」

俺は立ち上がった。

妹は小さく頷いた。

いつもの光景だった。


キッチンへ向かう途中。

玄関のチャイムが鳴った。

夜中だった。

時計を見る。

午前1時過ぎ。

こんな時間に誰だ。

ドアを開ける。

警察だった。

若い警官と年配の警官。

二人とも妙な顔をしている。

「夜分遅くに申し訳ありません」

「少しお話を……」

俺は首を傾げた。

「今忙しいんです」

「妹が待ってるので」

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そう言った瞬間。

二人の表情が凍った。


年配の警官が静かに聞いた。

「妹さん……ですか?」


「はい」


「今も家に?」


「当たり前でしょう」


沈黙。

長かった。

嫌な空気だった。

そして警官は震える声で言った。


「お兄さん」


「妹さんは三年前の事故で亡くなっています」


俺は笑った。

何を言ってるんだ。

意味が分からない。

さっきまで話していた。

泣いていた。

笑っていた。

今も部屋で待っている。


俺は警官を無視して振り返った。

妹に聞けば済む話だ。

そう思った。


部屋の扉を開く。


そこには誰もいなかった。


輪椅子だけが置かれていた。


窓は閉まっている。

隠れる場所もない。

なのに誰もいない。


俺の呼吸が止まった。


警官が後ろから言った。


「近所の方から通報がありました」


「毎晩、誰もいない部屋に向かって話している男性がいると……」


俺は輪椅子を見た。

いつもの位置。

いつもの向き。

いつものまま。


そして気付いた。


今日作ろうとしていたオムライス。


妹の好物だった。


三年前。

事故で亡くなる前の。


俺はその場に崩れ落ちた。


テーブルの上には、

さっき妹が触ったはずのコップ。


だが埃が積もっていた。


まるで最初から、

誰もそこにいなかったかのように。


その時。

誰もいないはずの部屋の奥から、

聞き慣れた声がした。


「お兄ちゃん」


「もう休んでいいよ」


俺は振り返れなかった。

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