父が宝くじで3億円当てた。
家族全員、人生が変わると思った。
父は会社を辞めなかった。
家も建て替えなかった。
車も軽自動車のままだった。
「何に使うの?」
私が聞くと父は笑った。
「まだ使わん。」
数か月後から、親戚が急に増えた。
「久しぶり!」
「困っててさ…」
父は誰にも貸さなかった。
「冷たい。」
陰口も聞こえた。
それでも父は、
「今は黙っとく。」
そう言うだけだった。
父が大きくお金を使ったのは、
当選から5年後だった。
父は地元に小さな奨学金制度を作った。
「親の収入で夢を諦める子を減らしたい。」
匿名だった。
誰も父が出しているとは知らない。
亡くなったあと、
弁護士からその事実を聞いた。
私は聞いた。
「どうして家族にも黙ってたの?」
父の手帳には一行だけ書かれていた。
「宝くじは運で当たる。」
「でも使い方は人間性が出る。」
3億円が父を立派にしたんじゃない。
父は、
当たる前から立派な人だった。
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