「娘のランドセルを、質屋で見つけた。」
見間違いだと思った。
でも内側に、
私が油性ペンで書いた名前。
間違いなく、あのランドセルだった。
娘は半年前に亡くなっている。
事故の日、
ランドセルだけが見つからなかった。
「流されてしまったんでしょう」
そう言われて、
私も納得するしかなかった。
なのに今、
ガラスケースの中に並んでいた。
店員に聞くと、
「数週間前に買い取りました」
と言う。
売った人の特徴を聞いた瞬間、
私は立ち尽くした。
売ったのは、夫だった。
家に帰ると、
夫は静かにうなずいた。
「ごめん…捨てられなかった。
」
毎日抱えて泣いて、
毎日眠れなかった。
家にある限り、
娘が帰ってくる気がしてしまった。
だから手放した。
でも罪悪感で、
誰にも言えなかった。
私はランドセルを買い戻した。
今も娘の部屋に置いてある。
あの日から時間は進んだ。
それでも、
親は「忘れる」のではなく、
思い出と一緒に生きることを覚えるだけなんだ。
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