大学4年生の時だった。
私が子どもの頃からずっと可愛がってくれた伯母が亡くなった。
知らせを聞いた時は頭が真っ白になった。
すぐにでも駆けつけたかった。
でも、その日はどうしても外せない実習説明会の日だった。
当時は厳しくて、その説明会に出なければ実習に参加できない。
実習に参加できなければ卒業もできない。
私は葬儀会場で、人生で一番苦しい選択を迫られた。
親戚の中には理解してくれない人もいた。
「そんな大事な日に行くの?」
「普通は最後までいるでしょう」
「おばさんより学校の方が大事なの?」
そんな声が耳に入った。
正直、私自身も苦しかった。
できることなら最後まで伯母のそばにいたかったからだ。
そんな時だった。
喪主だった従姉妹が私に言った。
「行っておいで」
私は驚いて顔を上げた。
従姉妹は涙を浮かべながら笑った。
「こんなことでお母さんは怒らないよ」
「むしろ行きなさいって言う人だから」
最期まで伯母を看病していた母も同じことを言った。
「大丈夫だから行きなさい」
一番悲しいはずの人たちが、私の背中を押してくれた。
私は泣きながら説明会へ向かった。
終わった瞬間、急いで火葬場へ向かった。
なんとか間に合った。
本当にギリギリだった。
私は棺の前に立ち、伯母に最後の言葉を伝えた。
「ありがとう」
「たくさん助けてくれてありがとう」
それだけで涙が止まらなかった。
あれから何年も経った。
私は今、緩和ケア認定看護師として働いている。
患者さんや家族に寄り添うたびに、あの日のことを思い出す。
人生にはどうしても選ばなければならない瞬間がある。
そんな時、本当の優しさは相手を縛ることではなく、未来へ送り出すことなのだと教えてくれたのは伯母と従姉妹だった。
今でも心の中で思う。
「おばちゃん、私ちゃんと看護師になったよ。」
「あの日送り出してくれて、本当にありがとう。」
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