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“シングル予約でしたが別の部屋になります。料金はそのままです”って言われて通された部屋がこれ。予約と違うのに“そのままどうぞ”で済まされそうになったので、聞き方を変えたら空気が変わった
2026/03/31

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その日、私は少しだけ早めにホテルに着いた。

出張だった。
長い移動で、体も少し重い。
とにかく早く部屋に入って、シャワーを浴びて、ベッドに倒れ込みたかった。

ロビーはそこそこ綺麗だった。
観葉植物、静かなBGM、カウンターには笑顔のフロントスタッフ。

「ご予約のお名前をお願いいたします」

私は名前を伝える。
スタッフはパソコンを確認し、軽く頷いた。

その瞬間だった。

「あの…申し訳ありません」

その言い方で、嫌な予感がした。

「本日はシングルルームでご予約いただいておりますが…」

うん、知ってる。
出張のたびにこのホテルを使っている。
いつも同じシングル。

「都合により、シングル以外のお部屋になります」

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……。

え?

「料金は変わりませんので」

スタッフは丁寧にそう付け加えた。

私は一瞬考えた。

シングル以外。

つまり――

ツイン?
ダブル?
もしかして、ちょっと広い部屋?

まぁいいか。

料金が同じなら、むしろラッキーかもしれない。

私は軽く頷いた。

「大丈夫です」

鍵を受け取り、エレベーターへ向かう。
静かな廊下。
カーペットが足音を吸い込む。

部屋番号を確認する。

「307」

カードキーをかざす。

ピッ。

ドアが開いた。

そして私は――

一歩、止まった。

……ん?

いや。

え?

ちょっと待って。

頭が一瞬フリーズする。

そこにあったのは――

ベッドじゃなかった。

畳だった。

畳。

しかも、思った以上にガチの和室

広い。

いや、広すぎる。

部屋の中央には大きな座卓。

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壁には掛け軸。
隅には立派な床の間。

そして――

布団が、きれいに畳まれて積まれている。

私は部屋の中で立ち尽くした。

さっきのフロントの言葉が、ゆっくり頭の中で再生される。

「シングル以外のお部屋になります」

……。

確かに。

嘘は言ってない。

でも。

これは想定外すぎる。

私は部屋をもう一度見回した。

いや、広い。

広すぎる。

一人で泊まるには完全に旅館サイズ。

座卓の周りには座布団が四枚。

誰が来る予定なんだ。

私、今日一人なんだけど。

とりあえず荷物を置く。

スーツケースが、やけに小さく見える。

静かな和室。
畳の匂い。

しばらく立っていると、なんだか可笑しくなってきた。

「いや、これ…」

思わず笑ってしまう。

シングルの代わりに、
和室10畳くらいの部屋に通される出張客。

しかもベッドなし。

完全に修学旅行スタイル。

私は布団の山を見つめた。

これ、自分で敷くのか。

社会人になってから、
ホテルで布団を敷いたことはない。

まぁいい。

ちょっと面白い。

そう思ってスマホを取り出した。

写真を撮る。

広い畳。
座卓。
掛け軸。

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布団の山。

そして友達に送った。

「みてみてー!」

すぐ返信が来た。

「え、旅館?」

「修学旅行?」

「合宿?」

違う。

これ。

ビジネスホテルの出張。

私は返信した。

「シングル予約したらここ通された」

すぐ返事。

「なんでwww」

ほんとそれ。

でも、考えてみるとフロントはちゃんと言っていた。

「シングル以外のお部屋になります」

確かに。

間違ってはいない。

ただ――

想像してた方向と180度違っただけ。

その夜。

私は広すぎる和室で一人、布団を敷いた。

静かな部屋。
畳の上。

電気を消す前に、もう一度思う。

もし同僚がこの部屋を見たら、絶対言う。

「なんで出張で旅館泊まってんの?」

そのとき私はこう答えるだろう。

「いや、シングル予約したんだけどさ」

「ホテルの“都合”でこうなった」

そして最後に、こう付け加える。

料金は変わりませんので、って。

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