その日、仕事を終えて家に戻った私は、自宅の前で一瞬足を止めた。
うちの駐車場に、知らない車がきっちり停まっていたからだ。
「え?」
最初は宅配か何かかと思った。
でもエンジンは切られていて、運転席から降りてきた女性は、バッグを持ったまま迷いもなく隣のネイルサロンのほうへ歩いていく。
しかも、私と目が合ったのに、軽く頭を下げることすらしない。
まるで「ちょっと借りてるだけですけど?」とでも言いたげな態度だった。
さすがに見過ごせなくて、私はすぐ声をかけた。
「すみません、どちらさまですか?」
女性はびくっとした顔で振り返って、すぐに
「あ、間違えました」
と答えた。
でも、その言い方が妙に軽かった。
申し訳なさより、「見つかったから言っておくか」という感じがにじんでいた。
私はそのまま聞いた。
「いや、間違えたって…ここに停めて、隣に行くつもりだったんですよね?」
すると彼女は、少しムッとした顔で言った。
「同じ家だと思ってました」
……は?
正直、その瞬間は怒るより先に笑いそうになった。
だって、どう見ても同じ家じゃない。
駐車場は分かれてる。玄関も別。建物だって途中できちんと仕切られている。
どう見たら“同じ家”になるのか、本気でわからない。
それでもまだ私は、客が勝手に勘違いした可能性もゼロじゃないと思おうとした。
でも次の瞬間、前にもあった出来事が頭をよぎった。
少し前、隣の家が工事をした時のことだ。
その時も、私が留守の間に業者の車がうちの駐車場に停められていた。
後になってから隣の人が菓子折りを持ってきて、「すみません、ちょっと借りてしまって」と言ったけれど、私はあの時からずっと引っかかっていた。
普通、先に言わない?
せめて急ぎなら、一言連絡を入れない?
なんで“使った後”に報告なの?
その違和感が、この瞬間に一気につながった。
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