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「今回ご請求額、5,492,883円です」ガス代の請求書を見た瞬間、私は本気で目を疑った。前回12.4㎥なのに今回9071.6㎥…ガス会社に電話すると「システム上そうなっています」と言われ、私は一枚の写真を送った
2026/06/03

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ガス料金の請求書を開いた瞬間、私は本気で固まった。

「今回ご請求額 5,492,883円」

一、十、百、千、万、十万、百万……。

え、五百万?

一瞬、目の錯覚かと思った。

うちは普通の家庭だ。

温泉旅館でもない。

銭湯でもない。

家の中でこっそり工場を動かしているわけでもない。

なのに、請求書に書かれていた今回の使用量は、9071.6㎥。

前回は12.4㎥。

前年同月は15.2㎥。

どう見てもおかしい。

いや、おかしいなんてレベルじゃない。

数字だけ見たら、我が家だけで町内全部の風呂を沸かしたみたいな量だった。

私は請求書をテーブルに置き、何度も指でなぞった。

でも、数字は変わらない。

5,492,883円。

払えるわけがない。

というより、払う理由がない。

私はすぐにガス会社へ電話した。

「すみません、請求額が明らかにおかしいんですが」

すると電話口の担当者は、驚くでもなく、慌てるでもなく、淡々と言った。

「請求書はすでに発行されておりますので、期日までにお支払いください」

その瞬間、私は思わず黙った。

いやいや、そこじゃない。

支払いの話をする前に、この数字を見てくれ。

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「前回が12.4㎥で、今回が9071.6㎥なんです。普通の家庭で、こんな使用量になりますか?」

私がそう聞くと、担当者は少し間を置いて言った。

「システム上は、そのように表示されております」

出た。

“システム上”。

まるでシステムがそう言えば、常識も現実も全部黙れと言われているみたいだった。

私は深呼吸して、声を落とした。

ここで感情的になったら負けだ。

「では、確認してください。メーター番号、検針記録、入力データ、全部です」

すると相手は、少し面倒そうな口調になった。

「ご家庭内で大量使用された可能性はございませんか?」

その一言で、私は逆に冷静になった。

大量使用?

五百万円分?

私は思わず笑ってしまった。

「大量使用って、五百万円分ですよ?うちは一般家庭です。もし本当に使ったと言うなら、今すぐ調査に来てください。私も知りたいです。うちのどこに、そんなガスを使う設備が隠れているのか」

電話口が、一瞬静かになった。

私はそのまま続けた。

「前回使用量、前年同月使用量、今回使用量を比べても、明らかに異常です。請求書の写真を今から送ります。

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確認してください」

私はすぐに請求書を撮影した。

今回使用量。

前回使用量。

前年同月使用量。

請求額。

全部が一枚でわかるように撮った。

そして、会社に送った。

そのうえで、はっきり伝えた。

「このまま“システム上問題ありません”で済ませるなら、消費生活センターにも相談します。私は、明らかに異常な請求をそのまま払うつもりはありません」

そこから、空気が変わった。

さっきまで事務的だった担当者の声が、急に慎重になった。

「確認いたしますので、少々お時間をいただけますでしょうか」

私は電話を切って、テーブルの上の請求書を見つめた。

五百万円。

たった一枚の紙なのに、心臓に悪すぎる。

もし私が数字を確認せずに、「請求書だから正しい」と思い込んでいたら。

もし、こういう手続きが苦手な人だったら。

もし、高齢の人がこの請求書を受け取っていたら。

怖くなって、誰にも相談できずに悩んでいたかもしれない。

そう思ったら、だんだん怒りが込み上げてきた。

約三十分後。

スマホが鳴った。

さっきのガス会社だった。

担当者の声は、明らかに変わっていた。

「このたびは大変申し訳ございません。確認したところ、検針データの入力に誤りがございました」

やっぱり。

私は静かに聞き返した。

「つまり、私の使用量ではなかったということですね?」

「はい。正しい金額で再発行いたします。今回の請求書は破棄していただいて問題ございません」

その言葉を聞いた瞬間、ようやく肩の力が抜けた。

怒鳴りたい気持ちもあった。

でも、それより先に思った。

確認してよかった。

黙って払わなくてよかった。

“システム上”という言葉に負けなくてよかった。

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数字は、いかにも正しそうな顔をしている。

請求書に印刷されているだけで、なぜか本物に見える。

でも、数字だって間違う。

システムだって間違う。

人が入力する以上、あり得ないミスも起こる。

だから、おかしいと思ったら黙ってはいけない。

その後、正しい金額の請求書が再発行された。

いつも通りの、普通の金額だった。

私はそれを見て、心底ほっとした。

そして、あの五百万円の請求書をもう一度見返して、思わずつぶやいた。

「数字は人を驚かせる。でも、常識までは騙せない」

たった一枚のガス料金請求書に、危うく心臓を止められるところだった。

でも今回は、泣き寝入りしなかった私の勝ち。

五百万円の請求は、きれいに消えた。

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