駅前ロータリーの歩道に、毎朝のように黒い車が半分はみ出して停まっていた。
最初に見たときは、正直「たまたまかな」と思った。
でも違った。
次の日も、その次の日も、同じように車の前半分が歩道をふさいでいる。
しかもそこは、ただの道じゃない。
駅前のロータリー。
朝は通勤の人が急ぎ足で歩き、学生が自転車で坂を下ってくる。
お年寄りも通るし、ベビーカーを押したお母さんも通る。
道幅はもともと広くない。
そこに車がはみ出しているせいで、歩行者は自然と車道側へよけるしかない。
私は毎朝そこを通るたびに、胸がザワッとした。
「これ、いつか絶対事故になる」
そう思っていた。
特に怖かったのは、自転車だった。
駅へ向かう坂道だから、下りの自転車は思った以上にスピードが出ている。
歩行者が車をよけて一歩外側に出る。
その横を、自転車がスッと抜けていく。
たったそれだけのことに見えるかもしれない。
でも、その一瞬でぶつかれば、転ぶのは歩行者だ。
お年寄りなら骨折するかもしれない。
子どもなら車道に倒れ込むかもしれない。
ベビーカーなら、考えただけで怖い。
それなのに、その黒い車は毎日そこにいた。
まるで「ここは自分の場所です」とでも言うように。
ある朝、私はとうとう我慢できなくなった。
また車が歩道にはみ出していた。
そのせいで、杖をついたおじいさんが少し大きく外側へ回り込んだ。
ちょうどそのタイミングで、坂の上から自転車が下りてきた。
自転車の人も慌ててブレーキをかけた。
キッと音がした。
おじいさんは驚いて立ち止まり、私は思わず声を出しそうになった。
幸い、ぶつからなかった。
でも、ぶつからなかったからセーフ?
違う。
事故にならなかっただけで、危険だったことは変わらない。
私はその場でスマホを出して、車の停め方を撮った。
歩道をふさいでいる位置。
坂道との距離。
人がよけて歩いている様子。
車が毎回同じようにはみ出していること。
全部、記録しようと思った。
それから数日、私は毎朝その場所を確認した。
やっぱり、黒い車はいた。
同じ場所。
同じ停め方。
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