「駐車場使用契約はお済ですか?まだなら不法侵入になるかも?」
8年待って、やっと借りられたマンションの駐車場。
初めて車を停めた翌朝、フロントガラスにそんな紙が挟まっていました。
私はその紙を見た瞬間、しばらく動けませんでした。
怒りというより、まず先に呆れました。
誰?
何様?
私はこのマンションに越して、もう8年になります。
建物自体は静かで、住人も落ち着いていて、暮らしやすい場所でした。
ただ一つだけ、ずっと不便だったことがあります。
それが駐車場でした。
マンション敷地内の駐車場は、ずっと満車。
私は車を持っていましたが、仕方なく徒歩10分ほど離れた月極駐車場を借りていました。
たった10分。
そう言えば短く聞こえるかもしれません。
でも、雨の日の10分は本当に長い。
真夏の夜、重い買い物袋を両手に持って歩く10分もきつい。
米袋を抱えて坂道を上がった日なんて、何度も途中で立ち止まりました。
マンションのすぐ下にある駐車場を横目で見ながら、
「いつかここに停められたらな」
と、何度思ったかわかりません。
私は毎年のように管理会社へ確認していました。
空きはありませんか。
待機はできますか。
順番はどうなっていますか。
しつこいと思われるかもしれません。
でも、それくらい切実でした。
そして、ようやくその日が来ました。
管理会社から電話がありました。
「駐車場に一台空きが出ました。まだご希望でしたら、使用開始できます」
私は思わず聞き返しました。
「本当ですか?」
担当者は明るく答えました。
「はい。お客様の順番です。書類は後日で大丈夫ですので、先にご利用いただいて問題ありません」
8年待った駐車場。
私はすぐにお願いしました。
「借ります。ぜひ使わせてください」
その日の夜、私は初めてマンションの駐車場に車を停めました。
たったそれだけのことなのに、ものすごく嬉しかった。
車を降りて、すぐにエントランスへ入れる。
雨に濡れずに済む。
重い荷物を持って遠くから歩かなくていい。
これだけで、生活が少し楽になると思いました。
やっとだ。
本当にやっとだ。
そう思いながら、その日は気分よく眠りました。
ところが翌朝。
出勤しようとして駐車場に行くと、私の車のワイパーに白い紙が挟まっていました。
嫌な予感がしました。
近づいて紙を外し、広げました。
そこに大きな文字で書かれていたのが、これです。
「駐車場使用契約はお済ですか?」
そして、その下。
「まだなら不法侵入になるかも?」
私は一瞬、頭の中が真っ白になりました。
管理会社から使用許可をもらっている。
契約手続きも進んでいる。
順番だって正式に私だった。
それなのに、なぜ同じマンションの誰かに、こんなふうに疑われなければいけないのか。
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