夜、シャワーを浴びているときでした。
首の後ろに、何かが引っかかるような感触がありました。
最初は髪の毛かと思いました。
でも、指先でそっと触ると、ぺりっと何かが剥がれたのです。
手のひらに乗せた瞬間、私は息が止まりました。
それはホコリでも、虫でもありませんでした。
透明な小さなフィルムの上に、金属のような薄い部品と、黒い点のようなものがついていました。
「……何これ」
浴室の中で、私はしばらく動けませんでした。
その時、真っ先に浮かんだのは夫の顔でした。
ここ最近、夫の様子が少しおかしかったのです。
私が友人と会って帰ると、
「今日は駅前のカフェにいたんだろ」
と何気ない顔で言う。
スーパーに寄っただけなのに、
「いつもの道じゃなかったな」
と笑う。
極めつけは、私が親友にだけ話した内容を、夫がなぜか知っていたことでした。
私はずっと、偶然だと思おうとしていました。
でも、手のひらの中の小さなものを見た瞬間、その偶然が全部つながってしまった気がしました。
怖くなった私は、すぐに写真を撮りました。
そして、ネットに投稿しました。
「夜、シャワー中に首の後ろから出てきました。これが何なのか、分かる人いますか?」
数分後、コメントが一気につき始めました。
「電子部品っぽい」
「何かのセンサーの一部じゃない?」
「普通に落ちてくるものではなさそう」
「誰かに貼られた可能性もあるから、捨てないで」
読めば読むほど、背中が冷たくなりました。
私はすぐにそれをティッシュで包み、小さな袋に入れました。
夫には言いませんでした。
もし本当に夫が関係しているなら、ここで騒いだら証拠を消されると思ったからです。
翌朝、私は仕事に行くふりをして、駅前の修理店に持ち込みました。
店員さんは、それを見た瞬間に首をかしげました。
「少なくとも、ただのゴミではなさそうですね。何かの機械から外れた部品に見えます」
それだけで、十分でした。
その足で、私は弁護士にも相談しました。
弁護士は静かに言いました。
「断定はできません。ただし、ご主人の発言や行動に不自然な点があるなら、記録を残してください。会話、日時、写真、すべてです」
私はその日から、全部を記録しました。
夫の言葉。
帰宅時間。
私の行動をなぜか知っている発言。
そして、私がこの小さな部品を見つけた日付。
不思議なことに、夫はその日から少し落ち着きがなくなりました。
夜、私が帰宅すると、夫は何気ない顔で聞いてきました。
「昨日、風呂長かったな。何してたの?」
私は心臓が強く跳ねるのを感じました。
でも表情は変えませんでした。
「ちょっと首の後ろに何かついてて」
そう言った瞬間、夫の目が一瞬だけ泳ぎました。
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