「食パンの袋まで取っておくの?どれだけ貧乏性なのよ」
義母が私の手元を見て、鼻で笑いました。
私は食パンを食べ終わったあと、袋をきれいにたたんで、キッチンの引き出しにしまっていました。
それを見た義母が、まるで信じられないものでも見たような顔をしたのです。
「普通、捨てるでしょ。そんな袋まで残しておくなんて、みっともない」
隣にいた夫まで笑いました。
「確かに。うち、ゴミ袋くらい買えるからな」
私は一瞬、言い返そうかと思いました。
でも、ぐっと飲み込みました。
食パンの袋って、ただの袋に見えて、意外と優秀なんです。
普通の薄いポリ袋より丈夫で破れにくいし、ニオイも漏れにくい。
私は料理中の生ゴミを入れたり、犬の散歩用のマナー袋にしたり、濡れたものを一時的に入れたりしていました。
特に夏場の生ゴミには、本当に助かるんです。
魚の内臓や玉ねぎの皮、肉のパックから出た汁。
普通の袋だとすぐニオイが出るけれど、食パンの袋に入れて口をしっかり結ぶと、かなり抑えられます。
でも義母は、私の説明なんて聞く気がありませんでした。
「節約っていうより、ただのケチよね」
夫も笑いながら、
「まあ、ほどほどにしろよ。キッチンが貧乏くさく見えるから」
と言いました。
その言葉で、私の中に小さな火がつきました。
別に、私はお金がないから残しているわけじゃない。
便利だから残しているだけ。
でもこの人たちは、自分が知らない使い方を全部“貧乏くさい”で片付けるんだなと思いました。
数日後、週末に親戚が集まることになりました。
義母は張り切って料理を作ると言い出しました。
「今日は私が魚料理を作るから」
そう言って、台所に立ちました。
私は手伝おうとしましたが、義母は少し勝ち誇った顔で言いました。
「大丈夫。あなたは座ってて。こういうのは慣れてるから」
私は素直に引き下がりました。
ところが、料理が進むにつれて、キッチンの空気が変わり始めました。
魚の内臓。
エビの殻。
生ゴミ。
それらを義母は普通の薄いポリ袋にそのまま入れて、ゴミ箱に放り込んでいました。
その日は暑い日でした。
しばらくすると、キッチンから何とも言えないニオイが漂い始めました。
最初に気づいたのは、親戚の子どもでした。
「なんか臭い……」
その一言で、大人たちも気まずそうに顔を見合わせました。
義母は慌てて言いました。
「魚をさばいたから、少し仕方ないのよ」
そして空気清浄機を強にして、消臭スプレーをまきました。
でも、魚の生臭さとスプレーの甘い匂いが混ざって、余計にひどいことになりました。
親戚たちは、だんだん箸が進まなくなっていました。
夫も鼻を押さえながら、小声で言いました。
「ちょっと臭いな……」
私はその時、静かに立ち上がりました。
キッチンの引き出しを開けて、いつも取っておいた食パンの袋を一枚取り出しました。
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