「ちゃんと洗ってないからよ」
生後2か月の甥っ子の頭を見た瞬間、義母はそう言い切りました。
甥っ子の頭には、白っぽいかさぶたのようなものが広がっていました。
細かいフケみたいなものが、頭皮にぴったり張り付いている。
少し黄色っぽく見える部分もあって、初めて見た私は思わず声に出しました。
「これ……大丈夫なの?」
すると、隣にいた義母がすぐに言ったのです。
「ちゃんと洗ってないからよ」
その場の空気が、一瞬で変わりました。
義母はさらに続けました。
「母親が怠けてるから、こうなるの」
その言葉に、義姉の顔が一気に青ざめました。
義姉はまだ産後2か月。
夜中も何度も起きて、授乳して、泣いたら抱っこして、眠る時間もほとんどない中で必死に育児をしていました。
それを知っているからこそ、私はその言葉が許せませんでした。
でも義姉は何も言い返しませんでした。
唇を噛んで、ただ甥っ子を抱きしめていました。
私は違和感を覚えました。
本当に、洗っていないからなのか。
赤ちゃんの肌って大人よりずっと弱いし、頭皮だって繊細なはず。
なんとなく、無理に触ってはいけない気がしました。
だから私は言いました。
「一度、病院で聞いた方がよくないですか?」
すると義母は、鼻で笑いました。
「これくらいで病院?今の若い人は大げさね」
そして、台所へ向かいました。
嫌な予感がしました。
数分後、義母はオリーブオイルとガーゼを持って戻ってきました。
「こういうのは、ふやかして取ればいいのよ」
義姉が慌てて言いました。
「お義母さん、まだ触らないでください。病院に聞いてから……」
でも義母は聞きませんでした。
「母親がそんなにビクビクしてるから、子どもがかわいそうなの」
そう言って、甥っ子の頭に手を伸ばしたのです。
「ちょっと待って」
私が止めようとした時には、もう遅かった。
義母はガーゼで頭皮をこすり始めました。
最初は軽く見えました。
でも、白いかさぶたのようなものが取れ始めると、義母はどんどん力を入れました。
「ほら、取れてるじゃない」
「こういうのは早く取らないとダメなの」
甥っ子は小さな顔をしかめ、泣き出しました。
義姉は今にも泣きそうな声で言いました。
「やめてください、痛がってます」
それでも義母は、
「赤ちゃんは何でも泣くのよ」
と言って、やめませんでした。
私はたまらず、義母の手を止めました。
「もう十分です。赤くなってます」
義母は不満そうに私を見ました。
「あなたまで何?きれいにしてあげてるのに」
確かに、見た目だけなら、さっきより白いものは少なくなっていました。
でも、甥っ子の頭皮はうっすら赤くなっていました。
義姉は黙って甥っ子を抱きしめ、何度も小さく謝っていました。
「ごめんね、ごめんね」
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