「肘が燃えたみたいに痛い……!」
熱い汁が手にかかった瞬間、私は思わず悲鳴を上げました。
右手の甲から指先まで、皮膚が一気に赤くなり、すぐにぷくっと水ぶくれが浮き上がってきたのです。
なのに、すぐ横にいた義母は、私の手ではなく床を見て言いました。
「ちょっと、せっかくのスープが台無しじゃない」
その一言で、痛みより先に心が冷えました。
その日は義実家で親戚が集まる日でした。
私は朝から台所に立たされ、野菜を切り、皿を出し、鍋を洗い、ずっと義母の指示通りに動いていました。
夫はリビングで親戚と談笑。
義母は口だけ出して、少しでも私の動きが遅いと、
「若いんだからもっと早くできるでしょ」
「うちではこれくらい普通よ」
と何度も言ってきました。
正直、嫌な気持ちはありました。
でもその場を壊したくなくて、私は黙っていました。
そして、できたての熱いスープを運ぼうとした時です。
義母が背後から急に近づいてきて、
「早くして。みんな待ってるのよ」
と言いながら、私の腕にぶつかりました。
次の瞬間、鍋の中の熱い汁が、私の手の甲と指にかかったのです。
「熱い!痛い!」
私は反射的に鍋を置き、水道へ走りました。
手を冷やしても、痛みはどんどん強くなりました。
皮膚は赤く腫れ、一部は白っぽくなり、水ぶくれもでき始めていました。
それなのに義母は、後ろからため息をつきながら言いました。
「大げさねえ。不注意でこぼしただけでしょ」
私は振り返りました。
「お義母さんがぶつかったんです」
そう言うと、義母はすぐに顔をしかめました。
「人のせいにするの?怖い嫁ね」
その声を聞いて、夫がようやく台所に来ました。
私は一瞬、助かったと思いました。
でも夫が最初に言ったのは、私への心配ではありませんでした。
「母さん、大丈夫?びっくりしただろ」
その瞬間、私は言葉を失いました。
私の手は真っ赤に腫れている。
水ぶくれもできている。
痛くて涙が出ている。
それなのに、夫が心配したのは義母でした。
私は震える声で言いました。
「病院に行きたい。車出して」
すると夫は、面倒くさそうに眉をひそめました。
「今?親戚も来てるのに?」
義母もすぐに口を挟みました。
「薬でも塗っておけばいいじゃない。女はこれくらいで騒がないの」
私はその時、はっきり分かりました。
この家では、私は家族ではない。
便利に動く人間で、痛がることすら許されない存在なのだと。
私はもう何も言いませんでした。
水で冷やしながら、左手でタクシーを呼びました。
夫は驚いた顔で言いました。
「本当に行くのかよ。大げさにすると母さんが悪者になるだろ」
私は黙ってバッグを取りました。
義母は最後まで、
「こっちがぶつかった証拠でもあるの?」
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