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「すみません、逆に恥ずかしいと思って」トイレ前に置かれた黒いパーカー、私の背中の破れを隠すための男性の機転。怖かった一蘭の夜が、最後は“全力で守ってくれた優しさ”に変わった話
2026/06/03

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仕事帰りの金曜の夜。

私は一人で一蘭に入った。

一週間がやっと終わって、もう何も考えたくなかった。

誰とも話さず、ただ静かにラーメンを食べて、替え玉までして帰る。

それだけを楽しみにしていた。

店内はほぼ満席。

あの仕切りのある席に案内され、私は荷物を足元に置いて、食券を出した。

周りから聞こえるのは、麺をすする音と、店員さんの小さな声だけ。

この独特の静けさが、私はけっこう好きだった。

ようやく落ち着ける。

そう思った、その時だった。

コン。

隣の仕切りが、軽く叩かれた。

私は一瞬、手を止めた。

気のせいかなと思ったけれど、今度は仕切りの下から、すっと一枚の紙が差し込まれてきた。

私は反射的にそれを手に取った。

そこには、赤いペンでこう書かれていた。

「声を出すな。トイレに来い」

……え?

私は固まった。

ラーメン屋で、隣の席から、突然こんな紙を渡されることなんてある?

しかも、「声を出すな」?

「トイレに来い」?

怖すぎる。

意味がわからない。

私は紙を持ったまま、そっと隣を見た。

でも仕切りがあるから、顔は見えない。

ただ、下のほうから少しだけ見えた腕が、かなり大きかった。

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黒い服。

ゴツい手。

そして、無言。

私は一気に悪い想像ばかりしてしまった。

変な人?

脅し?

宗教の勧誘?

何かのドッキリ?

それとも、本当に危ない人?

心臓がドクドク鳴り始めた。

ここは一蘭。

普通の店よりも静かで、席も区切られている。

店員さんは奥にいるし、大声を出せば、逆に店中の視線を集める。

助けを呼びたいけれど、何をどう説明すればいいのかもわからない。

「隣からトイレに来いって紙が来ました」

そんなこと言ったら、店中がざわつくに決まっている。

私はスマホを握った。

何かあったら、すぐ通報できるように。

その時、隣の人が立ち上がった。

チラッと見えた。

黒いキャップ。

大きな体。

ヒゲ。

正直、かなり怖そうな見た目だった。

その人は何も言わずに、トイレのほうへ歩いていった。

そして去り際に、もう一度だけ仕切りをトントンと叩いた。

まるで、

「来い」

と言われているみたいだった。

無理。

絶対無理。

私はその場から動けなかった。

ラーメンどころではなかった。

目の前に湯気の立つ丼があるのに、味なんてまったく想像できない。

すると、後ろのほうから小さな笑い声が聞こえた。

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女子高生らしき二人が、こっちを見て、慌てて目をそらした。

向かい側のサラリーマンも、妙に不自然な動きをしている。

私を見る。

すぐ目をそらす。

また見る。

また目をそらす。

……何?

何なの?

私はますます怖くなった。

もしかして、私だけ何か仕掛けられている?

それとも、もう何かされている?

背中に冷たい汗が流れた。

その瞬間だった。

椅子から少し腰を浮かせた時、背中が妙にスースーした。

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