実家の押入れを整理していたら、思わぬものが出てきた。
埃をかぶった小さな封筒。その中に、母が昔バイトしていた頃の請求書がきちんと整理されていたのだ。
私は息を呑んだ。
一枚一枚、丁寧に数字が並んでいる。
日付、作品名、枚数、単価――すべて手書きだ。
「1枚70円」。
わずか70円で、母は数十枚のセル画を塗っていた。
内職と呼ぶにはあまりに膨大な量だ。
私は机に座り、じっと請求書を見つめる。
70円でこんなに大変な作業をしていたのか――と胸が詰まる。
ドラゴンボール、アンパンマン――子供の頃、母が「塗っていた」と聞いていた作品名だ。
でも、そこには思いもよらぬタイトルも並んでいた。
「ミスター味っ子」――え、母さん、これも塗ってたのか。
手が震える。
子供の頃、何気なく眺めていたアニメの裏側。
母の努力が、こんな形で証拠として残っていたのかと思うと、胸が熱くなる。
数字だけを見ると冷たい紙の請求書だが、その向こうには母の汗と忍耐、そして誇りが刻まれていた。
私はページをめくる。
「62日、ディッコ、11枚、1,330円」
「5日、ミリオ、11枚、770円」
ひとつひとつの数字に、母が塗り込んだ時間がある。
腕を動かし、筆を走らせ、色を塗り重ねたその時間。
子供の私には、ただアニメを楽しむだけだったけど、大人になった今、初めてその苦労の重みが分かる。
ふと、笑みがこぼれる。
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