うちの庭は、道路に面している。
広いわけではない。
むしろ、車一台分がやっと入るくらいの、普通の小さなスペースだ。
鉢植えを置き、子どもの自転車を端に寄せ、休日には少しだけ草を抜く。
私にとっては、ただの庭ではない。
家の一部だ。
それなのに、ある時から妙な音がするようになった。
朝。
昼。
夕方。
「ギュッ」
タイヤが砂利を踏む音。
「ブン」
エンジンをふかす音。
最初は隣の家かと思った。
でも違った。
窓のレースカーテンを少しだけ開けた瞬間、私は固まった。
知らない車が、うちの庭に前輪を突っ込んでいた。
そして、当たり前みたいな顔で切り返していた。
いや、顔は見えない。
でも車から漂う空気が完全にこう言っていた。
「ちょっと借りるだけだから」
借りるな。
ここは無料の方向転換サービスではない。
私はしばらく様子を見た。
一回だけなら、まあ仕方ないと思おうとした。
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