「うちの荷物、どこに置けばいいんですか」
新幹線に乗り込んだ瞬間、私は思わず声が出た。
ベビーカーが一台。
スーツケースが二つ。
子どもの荷物もある。
だから、普通の席では無理だと思って、わざわざ大型荷物スペースつきの座席を予約した。
安くない。
早めに取った。
移動中に周りへ迷惑をかけないように、ちゃんと考えたつもりだった。
なのに。
私たちの席の後ろにあるはずの荷物スペースは、すでに他人のスーツケースでぎっしり埋まっていた。
紫の大きなスーツケース。
赤いスーツケース。
青いスーツケース。
黒いバッグ。
まるでそこだけ空港の荷物置き場だった。
私は一瞬、席を間違えたのかと思った。
チケットを見る。
号車も席番も合っている。
壁にはちゃんと書いてある。
「特大荷物スペース」
「この席をご利用のお客様のスペースです」
つまり、ここは私たちが予約した席のための場所。
なのに、私たちの荷物を置く場所がない。
夫がベビーカーを抱えたまま固まった。
子どもは通路で不安そうに私を見ている。
後ろからは次々と人が乗ってくる。
「すみません、通ります」
「荷物、どけてもらえますか」
焦りで背中に汗が出た。
こっちは通路を塞ぎたくないから、この席を買ったのに。
今、通路を塞いでいるのは、私たちじゃない。
他人の荷物のせいだった。
近くの席に座っていた外国人らしき乗客たちが、こちらをちらっと見た。
一人がスマホを見ている。
一人はイヤホンをしている。
一人は窓の外を見て、知らないふり。
いやいやいや。
この紫のスーツケース、今あなたの足元から出しましたよね?
私は深呼吸した。
感情のまま怒鳴ったら、こっちが悪者みたいになる。
でも黙っていたら、こっちが泣き寝入りになる。
「すみません。この荷物、どなたのですか?」
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