新幹線に乗るとき、私はいつもA席を取る。
窓側なら、人の出入りで立たなくていい。
スマホを見たり、外の景色を眺めたり、少し眠ったりできる。
その日も、ただ静かに帰りたかっただけだった。
仕事帰りで体は重かったし、指定席を取ったのも「せめて移動中くらいは落ち着きたい」と思ったからだった。
ホームで列に並び、車内に入る。
自分の座席番号を確認して、席に近づいた瞬間、私は足を止めた。
私のA席の足元に、なぜか大きなスーツケースが半分入り込んでいた。
その上には上着。
さらに別の袋が座席の背面にぶら下がっていて、通路側のC席の人は、まるでそこ全体を自分の荷物スペースのように使っていた。
私は一瞬、自分の席を間違えたのかと思った。
でも座席番号は合っている。
A席は私の席だった。
私はできるだけ普通の声で言った。
「すみません、ここ私の席なので、荷物を少し動かしてもらってもいいですか?」
するとC席の人は、こちらをちらっと見て、ため息をついた。
「上、空いてないんで」
その言い方に、まず驚いた。
謝るでもない。
「あ、すみません」でもない。
まるで私が面倒なことを言っているみたいな顔だった。
私はもう一度言った。
「でも、足が入らないので……」
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