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3回はみ出し駐車で通行不能。「俺が誰か分かってる?」と言われても、議員のベンツを警察に確認した話
2026/02/05

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「またお前か!」

朝、家のドアを閉めた瞬間、路地の出口で呼び止められた。顔を上げると、数日前に駐禁シールを貼られていた、あのベンツの持ち主だった。

ドアを乱暴に閉め、こちらに近づいてくる。

「誰に通報したか、分かってるよな?」

いきなり核心を突いてきた。謝罪でも説明でもない。最初から“詰め”だった。

私は一度深呼吸して、できるだけ穏やかな声で返した。

「おはようございます。何かご用ですか?」

男は鼻で笑った。

「とぼけるなよ。俺がコインパーキングに停めてたの、見てただろ?」

朝の通学時間帯だった。子どもを送る親、ゴミを出しに来た住民が、足を止め始める。

「正規の場所だ。それを通報?ずいぶん大胆だな」

私は声を荒げなかった。

「停めている“場所”の話ではありません。車体が道路にはみ出している、という話です」

一瞬、男の表情が止まった。だがすぐに不機嫌そうに吐き捨てる。

「そのくらい、誰でもやってるだろ」

私は視線を外さずに言った。

「でも、あなたは毎回です」

周囲から小さなざわめきが起きた。

「確かに、いつも同じ車だよね」「前から通りにくいと思ってた」

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男は舌打ちし、声を低くした。

「……俺が誰か、知って言ってるのか?」

一歩、距離を詰めてくる。

「地元じゃ顔が利く。議員だぞ」

その言葉には、はっきりとした威圧があった。

「下手なことして、後で困るのはお前だ」

正直、怖さはあった。でも同時に、ここで引いたら終わりだとも思った。

「困るかどうかを決めるのは、私じゃなくて警察だと思います」

そう言って、私はスマートフォンを取り出した。

「写真、見ますか?」

画面をスライドする。別の日、別の時間、同じ場所。何度も同じように、車体が道路にはみ出している。

「一度だけじゃありません」

男は苛立ったように手を伸ばした。

「そんなの、証拠になるわけねぇだろ!」

そのときだった。

今まで黙っていた、ベビーカーを押した母親が、小さな声で言った。

「……すみません」

彼女は、車の前で立ち止まっていた。

「この車があると、ここ、通れないんです」

ベビーカーの前輪が、縁石に引っかかっている。その光景を見て、周囲の空気が一気に変わった。

男は何か言い返そうとして、言葉を失った。

私はそのまま警察署に電話をかけ、スピーカーにした。

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「以前相談した件ですが、コインパーキングに停めていても、車体が道路にはみ出している場合は――」

電話口の警察官は、落ち着いた声で答えた。

「状況によっては、通行妨害として違反になります。現地確認の上、対応します」

男の顔色が、はっきりと変わった。

数日後、その駐車スペースには注意喚起の表示が設置され、警察の巡回も入った。

あのベンツは、それ以来一度も見ていない。

800円の区画にも、1000円の区画にも。

後日、あの母親が小さく頭を下げて言った。

「ありがとうございました」

私は何も返さなかった。ただ、前よりも通りやすくなった道を見て思った。

声の大きい人や、立場のある人ほど、ルールは自分のためにあると思いがちだ。

でも現実は違う。

子どもとベビーカーが通れない道に、正義なんてない。

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