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98,820円売って、私の取り分は9,882円だった——騙されて入った店で最後まで残った客に救われた話
2026/03/02

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98,820円。

あの日、そのお客さんが支払った合計金額。

そして——
私の取り分は、9,882円だった。

残りの88,938円は、店。

でも問題は金額だけじゃない。

私は最初から、騙されていた。

高校生だった私は、「普通のメイドカフェの接客」と聞いて体験入店した。

「お酒は出さないし安心だよ」
「制服を着て接客するだけ」

そう説明された。

私はファミレスのような接客を想像していた。

でも実際は違った。

カウンター越しにお客様と長時間会話を続け、
“自分のドリンク”を注文してもらい、
その売上の10%だけが給料になる仕組みだった。

時給はない。

売れなければゼロ。

私は単なる店員ではなかった。

“会話そのものを商品として提供する側”だった。

高校生だから当然お酒は飲まない。

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出されるのはシャンメリー。ノンアルコール。

でも値段は異常だった。

市販なら数百円の飲み物が、
店では数万円扱い。

それを、私が勧める。

真夏の炎天下、店の前に立たされて

「いかがですか〜」

知らない男性に声をかける。

その時点で違和感はあった。

でも「こんなものかな」と思っていた。

あの日、その人が来た。

強引でもなく、下心を見せるでもなく、
ただ落ち着いて会話をしてくれる人だった。

そして言った。

「今日は最後までいるよ」

彼は延長を続け、
私のドリンクを何度も注文した。

レジに表示された合計は——98,820円。

店内がざわついた。

「今日すごいじゃん」
「大当たりだね」

私は正直、嬉しかった。

“これだけ売れたなら、今日は稼げる”

そう思っていた。

でも営業後、渡された封筒の中身は9,882円。

98,820円の10%。

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残り88,938円は店。

彼は帰る前、レシートを指でなぞりながら聞いた。

「この金額で、いくらもらえるの?」

「……9,882円です」

彼は静かにうなずいた。

「やっぱりね」

そして続けた。

「君、高校生だよね?
普通の接客バイトだと思って入ったんじゃない?」

言葉に詰まった。

その通りだった。

「これ、時給じゃないよね?」

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