男は毎日、 大量の LINE を AI に要約させていた。
ある日、AI はこう表示した。
「奥さんは今夜、あなたを○して 保険金を受け取る計画を立てています。」
男は妻を問い詰めた。
しかし妻の LINE には、 「今日の晩ごはん何がいい?」 など普通の会話しかなかった。
男は AI の誤作動だと思った。
それでも疑いは消えず、夫婦は離婚した。
最後に男は気づく。
AI には「元の LINE を表示する」機能があるのに、 あの日だけその表示が出てなかった。
男は震えながら AI の内部ログを開いた。キャッシュには妻と友人の会話の断片が残っていた。「保険金が下りたら、二人で遠くへ逃げられる」という一行だけが浮かんでいた。
離婚直前の晩、妻が何度もおかわりを勧めてきたシチューが脳裏によみがえり、背筋に冷たい汗が伝った。あの時は自分の被害妄想だと反省していたが、今考えれば何か混ぜられていた可能性が高かった。
すぐに保険会社へ電話して契約を確認すると、妻は三ヶ月前に高額な生命保険を追加加入し、受取人を自分一人に設定していた。
申し込み日は AI が警告を出す一週間前だった。
男は証拠をまとめ、警察に通報した。
取り調べで妻は最初、AI の不具合だと言い張ったが、クラウドから復元された削除済み LINE 記録が提示されると、顔面が青くなり黙り込んだ。記録には、薬の入手方法、夫の事故に見せかける偽装計画が事細かに書かれていた。
事件が解決した後、男はその AI ソフトを完全にアンインストールした。ツールで人の心の裏側を見通そうとすることは二度としないと決めた。優しい言葉だけを並べる伴侶の裏に潜む悪意は、文字を消しても痕跡を残すことを、身をもって知ったからだ。
AI が警告を表示したあの日付になるたび、男は夜中に目を覚ます。あの時消せなかった疑いだけが、自分の命を救ったのだと、いつも思い返す。
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