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「滞在1分で席料とお通し?」鶏皮しかないから出ようとしただけなのに、ウーロン茶代以外まで請求された話
2026/06/29

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池袋で焼き鳥が食べたくなった。

仕事終わりだった。

腹は減っている。

頭の中は、もう完全に焼き鳥だった。

炭火の匂い。

塩のきいた串。

冷たいお茶か、軽く一杯。

そんな気分で歩いていたら、目に入ったのが大衆酒場の看板だった。

「生中」「親皮串」

外の光る看板が、いかにも入りやすそうに見えた。

私は迷わず店に入った。

店内はにぎやかだった。

照明は少し暗めで、居酒屋特有の油とタレの匂いがする。

席に案内され、私はメニューを開いた。

その瞬間、少し違和感があった。

焼き鳥を食べに来た。

なのに、焼き鳥らしい焼き鳥がほとんど見当たらない。

何度もメニューを見直した。

串の欄。

おすすめ。

鶏。

焼き物。

探しても探しても、出てくるのは鶏皮ばかり。

私は顔を上げた。

「すみません、焼き鳥って鶏皮だけですか?」

店員さんは、悪びれる様子もなく答えた。

「はい、今は鶏皮になります」

その瞬間、私の中の焼き鳥気分が静かに死んだ。

鶏皮が嫌いなわけではない。

むしろ好きだ。

でも、今日は鶏皮だけを食べに来たわけではない。

ねぎま。

もも。

つくね。

砂肝。

そういう普通の焼き鳥を想像して入ったのだ。

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なのに、席に座ってから「鶏皮のみです」は、さすがに予想外だった。

私はすぐ判断した。

ここで無理に食べる必要はない。

店に入って一分も経っていない。

まだ何も食べていない。

だったら、出よう。

「すみません、焼き鳥を食べたかったので、今回は出ます」

そう言おうとした時だった。

店員さんがウーロン茶を持ってきた。

「あ、ウーロン茶です」

私は一瞬、固まった。

そういえば、席についた流れで飲み物を聞かれ、反射的にウーロン茶を頼んでいた。

まだ口もつけていない。

でも、もう運ばれてきてしまった。

ここで揉めるつもりはなかった。

私は普通に言った。

「すみません、ウーロン茶のお金だけ払って出ます」

それで終わると思っていた。

本当に、そう思っていた。

ところが、出てきた会計を見て、私は目を疑った。

ウーロン茶だけではない。

席料。

お通し。

しっかり乗っている。

滞在時間、一分。

食べ物、なし。

飲み物、口をつける前。

それでも、席料とお通しは発生するらしい。

私はレシートを見ながら、頭の中で何度も計算した。

いや、席には座った。

確かに座った。

でも一分だ。

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まだ店の空気に体がなじむ前だ。

お通しも、楽しむどころか、存在すらほぼ確認していない。

こちらは「メニューが希望と違うから出ます」と言っている。

それでガッツリ取るのか。

正直、気持ち悪いと思った。

金額の大きさだけではない。

その取り方の感じが嫌だった。

もちろん、店には店のルールがあるのだろう。

席料があります。

お通し代があります。

入店したら発生します。

そういう理屈は分かる。

でも、理屈として通ることと、客が納得できることは別だ。

入ってすぐ、目的のものがないと分かる。

すぐ出る。

それでも席料とお通しを取る。

その瞬間、店に対する印象は一気に変わった。

私はもう料理の味を知る前に、この店の後味だけを知ってしまった。

苦い。

ウーロン茶より苦い。

店員さんに文句を言うか迷った。

でも、言ってもどうせ「ルールなので」と返ってくる気がした。

こちらが食い下がれば、ただの面倒な客になる。

だから払った。

払ったけれど、納得はしていない。

レシートを受け取った時、笑うしかなかった。

焼き鳥を食べに来たのに、食べたのは理不尽だけ。

しかも会計つき。

池袋の夜の風が、店を出た瞬間にやけに冷たく感じた。

外の看板はまだ派手に光っている。

生中。

鶏皮。

安そうな文字。

でも、その光の裏で、私の財布はしっかり削られていた。

私は歩きながら思った。

店に入る前に、メニューをもっと見ればよかった。

席に座る前に確認すればよかった。

飲み物を頼む前に、食べたいものがあるか聞けばよかった。

そういう反省はある。

でも同時に、店側にも思う。

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客が何を求めて来たのか。

入ってすぐ出る理由が何なのか。

そこを少しでも考える気はないのか。

一分の滞在に、席料とお通し。

ルールとしては勝ちかもしれない。

でも、客の気持ちは完全に負ける。

いや、負けたのは客ではなく、店の信用かもしれない。

その夜、私は別の店で普通の焼き鳥を食べた。

ねぎまを一本食べた瞬間、ようやく心が戻った。

やっぱり、私が欲しかったのはこれだった。

鶏皮だけの店で一分座って、席料とお通しを払う体験ではない。

池袋は嫌いじゃない。

でも、こういう店に当たると一気に疲れる。

看板の明るさと会計の暗さが釣り合っていない。

次からは、入店前に確認する。

「焼き鳥ありますか?」

「鶏皮以外ありますか?」

「座った瞬間に何円発生しますか?」

居酒屋に入るだけで、契約書を読む気分になるとは思わなかった。

滞在一分。

口をつけていないウーロン茶。

席料とお通し。

その三点セットだけは、たぶん一生忘れない。

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