夜のことだった。私は赤ちゃんを抱き、両手には重い買い物袋を持っていた。寝不足で腰も痛い、頭もぼーっとしている。それでも、730円で家まで安全に帰ろうと、駅前でタクシーに乗り込んだ。
運転手は最初から無言。ミラー越しの目も合わない。まあいい、早く家に着けばそれでいい。到着し、私は習慣で「ありがとうございました」と言った。しかし返事はない。その瞬間、背後でエンジンの轟音が響いた。
ブオオオオッ!!!タクシーが猛スピードでバックしてくる。アクセル全開、迷いなし。私は反射的に赤ちゃんを体に抱き込み、買い物袋を手放した。卵が割れ、牛乳が地面に広がる。体が震え、心臓は喉まで飛び出しそうだった。
幸い、近くにいた男性が叫びながら車の前に立ち、女性も駆け寄って支えてくれた。「大丈夫!?赤ちゃん!!」その声で、やっと私は現実に戻った。目撃者がいて、ナンバーも確認された。
家に帰ってすぐ、私はタクシー会社に電話した。声は震えていたが、すべて伝えた。赤ちゃんを抱えていたこと、730円のワンメーターであったこと、降車直後に急加速でバックされたこと、通行人が目撃していたこと。
会社は調査を始め、数日後、正式な謝罪とともに運転手が危険運転で乗務停止になったと連絡が来た。
心の中には安堵と同時に怒りが込み上げた。私は何も悪くない。毎日睡眠を削り、体力を削って必死に小さな命を守っている。それなのに、たった730円のために命を脅かす危険運転が行われるなんて。
しかし、この経験は無駄ではない。証拠を記録し、会社に報告したことで、理不尽を跳ね返す手段を手に入れた。次に同じような危険が来たとしても、私は完全に主導権を握れる。心理的にも法的にも有利な状況を作ることができる。
私はこの出来事を胸に刻んだ。育児で疲れ果てた人、赤ちゃんを抱えて遠慮している人、我慢しなくていい。小さな命の重みは、たった730円では測れない。事故や危険に直面したとき、冷静に行動すること、証拠を残すことがどれほど重要かを学んだ。
夜、ベッドで赤ちゃんを寝かせながら思う。私は守った。私は記録した。次は、私が笑う番だ。危険運転をする人間に、心の底から「ざまあみろ」と思わせる瞬間を、私は必ず手に入れる。
あの夜の恐怖は、今や力に変わった。
理不尽に屈することなく、冷静かつ確実に反撃する準備は整った。次は、運転席に座る者が初めて震える番だ。