「うわ、これはやばいかも」――そう思った瞬間、私の座席はあの人の真横だった。
新幹線に乗り込んだとき、少し静かなグリーン車だと思っていた。
でも目の前の席には、裸足で座席テーブルに足を乗せている男性がいた。
その足は、まるで自分の部屋の机の上のようにくつろいでいる。
普通なら靴を脱ぐにしてもスリッパくらいだろう。
しかし、彼はまったく気にせず、足先がこちら側まで迫ってくる。
さらにスマホを手に通話まで始めた。
声は大きく、隣の私まで筒抜けになる。
私は初め、深呼吸して耐えた。
「まあ、少しの間だけなら…」
でも、足が何度も当たりそうになり、肘が机に当たる。
集中して読書や作業もできない。
これは、ただの“迷惑”ではなく、もはや“物理的妨害”だ。
私はすぐにスマホを取り出し、座席番号と車両番号を確認。
写真も撮影して、状況を記録した。
これはあとでしっかり乗務員に伝える必要がある。
隣の男性は、注意される気配もなくスマホ画面に集中している。
足はまだテーブルの上。
顔には「気にするなよ」とでも書いてあるかのような無神経さが漂う。
私は心の中で何度も「もう我慢の限界だ」とつぶやいた。
ただ静かに座るだけの権利は、誰にでもあるはずだ。
そこで呼び出しボタンを押し、乗務員さんを呼んだ。
状況を冷静に説明する。
「隣の方が裸足でテーブルに足を置き、通話も大きく、周りの乗客に迷惑です」
乗務員さんはすぐに隣の男性に声をかけた。
最初は軽く注意されたものの、男性は「え、ちょっとくらいいいじゃん」とでも言いたげに足を下ろさない。
そこで、私は撮影した写真と座席記録を見せた。
これで状況の深刻さが伝わったのか、男性はようやくしぶしぶ足を下ろし、通話も静かになった。
周囲の乗客も少しホッとした表情を浮かべている。
やはり、黙って我慢しているだけでは、無神経な人は改善しないのだ。
私は自分の席に戻り、やっと安心して背もたれに寄りかかることができた。
その瞬間、長く我慢していた緊張感が一気に解け、静かな満足感が胸に広がった。
誰も注意しないからこそ、迷惑行為は繰り返される。
でも、きちんと行動すれば、ちゃんと改善されるのだ。
そう実感した瞬間が、今回の新幹線の旅でいちばんスッとした瞬間だった。