その日、私は複数のブランド品とジュエリーを持ってアリオ鳳の買取店へ向かった。
引っ越しも近く、使わなくなった物を整理しようと思っただけだった。
特別高く売ろうとか、
そんな気持ちはなかった。
普通に査定してもらい、
納得できれば売る。
ただそれだけ。
店内へ入ると店員に席へ案内された。
すると査定の前に妙なことを言われた。
LINEの番号を取得してほしいという。
しかもわざわざブラウザから。
さらに、
「これは誰の物ですか?」
「こちらは誰が購入されましたか?」
と何度も確認される。
少し違和感はあった。
でもその時は、
買取だから必要なのだろうと思った。
その後、
持ち込んだ品物はすべて奥へ運ばれた。
そして店員は消えた。
最初の30分は我慢できた。
査定だから時間がかかるのだろう。
そう思っていた。
でも1時間が過ぎても戻ってこない。
聞こえてくるのは、
カシャ。
カシャ。
カシャ。
壁の向こうで写真を撮る音だけ。
私だけが席に残されていた。
時計を見る。
17時を過ぎている。
不安になった。
何をしているのかも分からない。
どんな査定をしているのかも分からない。
自分の品物が今どうなっているのかも分からない。
そしてついに我慢できなくなった。
机の上のインターホンを押した。
「すみません、帰りたいので品物を返してください」
すると返ってきたのは、
「あと2分で終わります」
という言葉だった。
私は待った。
でも2分は過ぎた。
10分過ぎても誰も来ない。
さらに待つ。
時計を見る。
18時を回っていた。
店に入ってから2時間以上。
この頃には査定額よりも、
早く帰りたい気持ちの方が大きかった。
ようやく店員が戻ってきた。
そして査定結果を告げた。
私は耳を疑った。
10点以上のブランド品やジュエリー。
その査定額が、
たった2万円。
思わず聞き返した。
さらに追い打ちをかけるように言われた。
「このネックレスはイミテーションですね」
私は驚いた。
なぜならそのネックレスは、
他店で8万円の査定が出ていたからだ。
もちろん売らなかった。
品物を返してもらい、
その場を離れた。
外へ出た瞬間、
ようやく息ができた気がした。
後日、
別の買取店へ持ち込んだ。
すると査定額はまるで違った。
ネックレスも本物として評価された。
あの日思った。
一番怖かったのは、
査定額が安かったことではない。
帰りたいと言っているのに、
なかなか帰れないあの空気。
断りづらくなるまで待たされる感覚。
それが本当に怖かった。
だからこれから買取査定へ行く人には伝えたい。
もし少しでも違和感を覚えたら、
「もう帰ります」
と早めに言ってほしい。
そして可能なら、
一人ではなく誰かと一緒に行ってほしい。
査定額は店によって大きく変わる。
でも時間と安心は、
一度失うと取り戻せないのだから。
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