ジモティーで400Lの冷蔵庫を出品したら、若い女の子が一人で取りに来た。
連絡してきたのは、二十歳くらいの女の子だった。
当日、彼女は一人で現れた。小柄で、台車も手伝いもいない。
「一人で運ぶの?400Lだよ?」
「大丈夫です。慣れてるので」
慣れてる、という言葉が引っかかった。
彼女は冷蔵庫を、驚くほど手際よく台車に固定した。角の保護も、ロープの縛り方も、素人じゃなかった。
「あの、失礼だけど、こういうの詳しいの?」
彼女が、少し笑った。
「昔、家がリサイクルショップだったので」
なるほど、と思った。手伝いを申し出たが断られた。
積み込みが終わって、彼女が言った。
「この冷蔵庫いい状態ですね。掃除も行き届いてる」
「まあ、大事に使ってたから」
「実はこれ、中古で売ると、二万円くらいになるんですよ」
「え?」
「型番的に、人気なんです。無料で手放すの、もったいないですよ」
私は、正直に無料で出したことを、少し後悔した。
でも彼女は、意外なことを言った。
「なので、これ受け取れません」
「え?」
彼女が、封筒を差し出してきた。
「一万円、入ってます。少ないですけど」
「いや、無料でって書いたのは私だし」
「わかってます。でも、価値のあるものを、タダで持っていくのは、性に合わなくて」
彼女が続けた。
「私、家業のリサイクル店を継ぐことにしたんです。無料回収で、お年寄りを騙す業者を、たくさん見てきて」
「騙す?」
「タダって言って持っていって、後から金を取る。そういうの、許せなくて。だから、まっとうな店を継ぐって決めたんです」
彼女が、まっすぐ私を見た。
「価値のあるものには、ちゃんと対価を払う。それが、私の店のやり方にしたくて」
私は、その一万円を、受け取ることにした。
無料で手放したはずの冷蔵庫が、思いがけず、お金になって返ってきた。
でも、もらったのはお金だけじゃない。
タダより高いものはない、と言われる世の中で。
「タダより、正直でありたい」という、一人の女の子の覚悟を、見せてもらった。
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