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バレンタインデーの夜、彼氏が“ちゃんと選んだ”と言って持ってきたバラが、さっきマンションの下に捨ててあった花と一模一样だったので値段を聞いたらはぐらかされ、その場で全部聞いた
2026/04/02

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バレンタインデーの夜だった。

仕事帰り、マンションの入口に入った瞬間、足が止まった。

ゴミ捨て場の横に、バラの花束が捨てられていた。

赤いバラ。
透明のフィルム。
リボンもついたまま。

「……え、もったいな」

思わずそう呟いた。

誰かがもらって、そのまま捨てたのか。
それとも、何かあったのか。

少しだけ気になったけど、そのまま通り過ぎた。

エレベーターに乗って、部屋に戻る。

今日は何も期待していなかった。
彼はそういうイベントにマメなタイプじゃない。

でも、ドアの前でスマホが鳴った。

「今着いた」

彼からのメッセージ。

「え?」

数秒後、インターホンが鳴る。

ドアを開けた瞬間——

私は固まった。

彼が、バラの花束を持っていた。

「はい、これ」

少し照れた顔。

でも、その花。

さっき見たものと、まったく同じだった。

包装。

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色。
本数。
リボンの位置。

全部。

「……ありがとう」

とりあえず受け取る。

手に持った瞬間、違和感が確信に変わる。

「これ、ちゃんと選んだんだよ」

彼はそう言って、靴を脱いで中に入る。

その言葉に、思わず笑いそうになった。

「そうなんだ」

私は花をテーブルに置いた。

「いくらしたの?」

軽く聞いてみる。

彼は一瞬だけ詰まってから、

「え、いや、そういうのじゃないじゃん」

と笑った。

「気持ちが大事でしょ」

——出た。

そのままソファに座って、スマホをいじりながら言う。

「なんかさ、ちゃんとしたの食べたくない?」

「今日くらいさ、いい感じのやつ作ってよ」

さらに続けて、

「あ、あとさ」

キッチンの方を指差す。

「この前買ったチェリーあるでしょ?あれ食べたい」

一瞬、何も言えなかった。

あのチェリー、ちょっと高かったやつだ。

自分用に買ったのに、まだ食べてない。

「……ねえ」

私はゆっくり彼の方を見た。

「この花、どこで買ったの?」

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彼はスマホから目を上げずに言った。

「普通に店」

「いつ?」

「昨日」

その瞬間、全部繋がった。

私は一歩だけ近づいた。

「じゃあさ」

できるだけ普通の声で言う。

「一回返品しようよ」

彼が顔を上げる。

「は?」

「昨日買ったなら、まだいけるでしょ」

その一言で、空気が変わった。

「いや、無理だよ」

明らかに早い否定。

「レシートないし」

「じゃあ、最初から返品する気なかったんだ」

彼は少しイラついたように言った。

「だからさ、そういう問題じゃないって」

「気持ちでしょ?」

その言葉を聞いた瞬間、もう我慢できなかった。

私は花束を手に取った。

そして、ゆっくり言った。

「ねえ」

彼の目を見る。

「その花さ」

一拍置く。

「さっき下に捨ててあったやつだよね?」

完全に、止まった。

彼の顔が固まる。

「……は?」

「入口のゴミ捨て場の横」

私は淡々と続ける。

「同じ花、見たよ」

沈黙。

「包装も、リボンも、全部同じだった」

彼は何も言わない。

言えない。

「だから、値段も言えなかったんだよね?」

さらに一歩踏み込む。

「買ってないもんね、それ」

数秒の沈黙のあと、彼が小さく言った。

「……違う」

でも、その声は弱かった。

私はそのまま花をテーブルに戻した。

「もういいよ」

それ以上、説明を聞く気はなかった。

「そういうの、いらないから」

彼は何か言おうとした。

でも、言葉が出てこなかった。

私はキッチンに向かいながら言った。

「チェリーは食べないで」

振り返らずに。

「それ、私のだから」

部屋の空気は、完全に変わっていた。

さっきまでの“イベントっぽさ”は、もうどこにもない。

私は冷蔵庫を開けながら、小さく呟いた。

「心意って、使い回しでもいいんだね」

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