あの日、私は本当にただの休日を過ごしていただけだった。
特別な予定もなく、友人と軽く遊ぼうという話になって、
たまたま入った施設だった。
建物の中は少し蒸し暑くて、人の気配がこもっている。
受付の前には小さな列ができていて、
順番を待つ間、何気なく周囲を眺めていた。
遠くからは笑い声や、何かが壁に当たる鈍い音が聞こえてくる。
いかにも“気軽に遊ぶ場所”という空気だった。
受付で名前を伝え、料金を支払う。
店員は慣れた様子で手続きを進め、
特に気になる点もなかった。
正直、何も疑っていなかった。
レシートなんて、ただの明細だ。
金額が書いてあって、あとで財布の中でくしゃっとなる、
それくらいの存在だと思っていた。
その認識が変わったのは、会計が終わったあとだった。
私は何気なくレシートを受け取り、
歩きながら中身を確認した。
投げ放題。
フロント貸靴。
割引券。
ふんふん、普通だなと思いながら、
上から順に目で追っていく。
そして――
ある一行で、完全に視線が止まった。
一度、読み飛ばしたかと思って戻る。
もう一度見る。
さらにもう一度確認する。
そこには、はっきりと印字されていた。
「キモ・オタク(大人 一般)」
……一瞬、意味がわからなかった。
頭の中で処理が追いつかないまま、
体の動きだけが止まる。
人って、本当にその場で固まるんだなと思った。
友人が「どうした?」と声をかけてくる。
私は無言でレシートを差し出した。
友人はそれを見て、一拍置いてから、
小さく肩を震わせた。
「いや、これは……」
笑いをこらえているのがわかる。
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