台風の日の朝、上司からメールが来た。
「出勤は各自の判断に任せます」
私は迷わず出勤した。
部長の性格はわかっている。
これは「自由」じゃない。
自由に見せかけたテストだ。
実は以前、大雪の日にも同じようなことがあった。
ニュースでは
「不要不急の外出は控えてください」
と繰り返し呼びかけていた。
私はそれを真に受けて自宅待機した。
ところが翌日。
部長はこう言った。
「昨日来た人たちは大変だったよな」
「こういう日に差が出るんだよな」
私の名前は出されなかった。
でも、その場にいた誰もがわかっていた。
言われているのは私だと。
だから今回の台風の日は出勤した。
そして案の定、朝礼で部長は言った。
「こういう日に出勤する人は信用できる」
「来てない奴はダメだな。責任感がない」
やっぱりな、と思った。
結局、判断を任せると言いながら、
求めている答えは最初から決まっている。
一方で、隣の部署の同期は
大雪の日も台風の日もリモート勤務。
上司が違うだけで、
評価基準も働き方もまるで違う。
会社員は安定している。
よくそう言われる。
でも私は思う。
上司の機嫌ひとつで評価が変わり、
人生まで左右される状態を、
本当に安定と呼べるのだろうか。
だから私は会社を辞めた。
逃げたと言われてもいい。
一つの会社、一人の上司に人生を握られるより、
逃げ道をたくさん持っている方が、
私にはずっと安定して見えた。
平日の朝が重いのも、
日曜の夜が苦しいのも、
全部が自分の弱さとは限らない。
環境の問題かもしれない。
本来、環境は選べる。
状況は少しずつ変えていける。
私はそう信じている。
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