「……当たった?」
画面に出た文字を、俺は三回見た。
一等。7億。
手が震えた。心臓がうるさい。息が浅い。
でも次の瞬間、俺はスマホを伏せて、深呼吸した。
そしていつも通り、制服を着て、靴を履いた。
——会社へ行った。
これが一番おかしいって、分かってる。
でも、ここで舞い上がったら終わる。
人生が変わるのは一瞬。
「周りにバレる」のも一瞬。
駅までの道、いつもより空が明るい。
なのに俺は、誰にも目を合わせない。
自分の顔が、何かを隠してるってバレそうで怖かった。
改札を抜けて、いつものフロア。
同僚が「おはよう」と言う。
俺も「おはよう」と返す。
平常運転。
心の中だけ、非常事態。
デスクに座っても、指先が落ち着かない。
「7億」という数字が頭の裏側でずっと鳴ってる。
笑いそうになる。
泣きそうにもなる。
昼休み。
俺は上司にさらっと言った。
「すみません、午後…病院寄ってから戻ります」
嘘ではない。
俺の人生は、今まさに“診てもらう”必要がある。
向かったのは、いつもの銀行じゃない。
自宅の近くでもない。
会社の最寄りでもない。
——隣町。
知らない街の銀行。
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