東京行きの新幹線、いつも通りC席を予約して乗り込んだ瞬間――目に飛び込んできたのは、A席に座る身なりの良い男性と、B席を「完璧に埋め尽くす」荷物だった。
座面のカーブに沿って、まるで展示品みたいにピッタリ。
なのに、上の荷棚は……空いてる。 スカスカだ。光って見えるレベル。
「なるほど。隣に誰も座らせないタイプね」
僕がC席に腰を下ろすと、彼は一瞬だけこちらを見た。
でも、僕がC席だと分かった途端、何事もなかったように本へ視線を戻す。
その仕草がまた絶妙に“上品”で、逆に腹が立つ。
第一印象の「身ぎれいな紳士」は、ここで一気に**「座席ブロッカー」**へ降格した。
列車が動き出して、車内はまだ余裕がある。
だから最初は「まあ、いずれ自分で気づいてどけるだろ」と思った。
ところが、彼はどけない。1ミリも。
ページをめくる音だけが静かに響いて、B席の荷物は微動だにしない。
その態度が、**“僕はここをこう使う”**という宣言に見えてくる。
そして新横浜。
ドアが開いた瞬間、空気が変わった。
自由席の乗車券らしき人たちが何人も乗り込んできて、通路が一気に詰まる。
視線が座席を探し、迷い、焦り、そしてB席の荷物にぶつかって止まる。
「空いてるはずの席」が、荷物で封鎖されている。
普通なら、ここで少しでも“どけようかな”の素振りくらいは出る。
でも彼は出さない。
何も見えていないかのように、何も聞こえていないかのように、ただ本を読んでいる。
――あ、これは「紳士」じゃない。
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