「誰も帰ってこーへんやろ。」
その一言を聞いた瞬間、胸の奥がぎゅっと掴まれて、息が止まりそうになった。
でも同時に、バラバラになりかけた私を、誰かがそっと抱き上げてくれた気がした。
夫が交通事故で亡くなって、1ヶ月半ほど休みをいただいた。
昨日から仕事復帰。
朝、制服に袖を通しただけで涙が出そうになって、鏡の前で何度も深呼吸した。
「泣いたらあかん」
そう思えば思うほど、目の奥が熱くなる。
久しぶりにフロアに入って、私の担当の入居者さんの部屋へ向かった。
しっかり者で、言葉も強めで、でも本当は誰より人のことを見ている女性。
ドアを開けて「おはようございます」と言いかけた瞬間、彼女が私を見て、軽く笑った。
「あーあんた久しぶりやなぁ。もう辞めたんやと思ってたわ。」
冗談のような口調。
でも私の胸には、思った以上に刺さった。
辞めてない。逃げてない。…逃げたかったけど。
「すみません、ちょっと…お休みいただいてて」
言葉を選んでいるだけで喉が詰まる。
自分の声が、知らない人みたいに震えていた。
彼女は少し首を傾げた。
「なんや、どないしたん?」
その優しさに耐えられなくなって、私は小さく言った。
「…実は、旦那さんが交通事故で、亡くなって…お休みしてて…」
言い終わった瞬間、目の奥に溜めていたものが一気に溢れてきた。
自分でもびっくりするくらい、涙が止まらなかった。
すると彼女は何も言わずに、私の手を両手でぎゅっと握ってくれた。
しわのある手。あたたかい手。
そのぬくもりが、今の私には痛いくらい沁みた。
「そうか、そうか。偉かったなぁ。」
偉かった。
その言葉だけで、心の中の何かが崩れて、私は声を出して泣いた。
彼女は続けた。
「私も旦那と息子亡くしてるから、わかるんやで。泣き。しんどいやろ。
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