深夜、冷たい雨がザーザーと降り続ける中、私は街の角で立ちすくんでいた。財布を家に忘れ、打つ手もないまま、身動きが取れない。
ポケットの中は空っぽ、財布がないとどうしようもないと思った。家まで帰るためのタクシー代もない。
その時、車のヘッドライトが私を照らした。
一台のタクシーが私の前に停まると、運転手が窓を開けて声をかけてきた。
「どうしたんですか?乗りませんか?」
私は心の中で驚きながらも、無意識にそのタクシーに乗り込んでいた。
「すみません、実はお金を持っていなくて…」
私は緊張しながらも、運転手に言った。財布を忘れたことを説明したが、運転手はあっさりとこう言った。
「大丈夫ですよ。家まで送りますから。」
その言葉に驚きつつも、少し安心した。しかし、心の中では「本当に大丈夫なのだろうか?」という疑念が湧いていた。
車内は静かで、外の雨音が響いている。運転手は黙って走り続け、私は降りるべき駅が見えてきた頃、何となく不安が募っていた。
「ここからタクシーでどれくらいかかるのかもわからないし、運転手の善意には裏があるんじゃないか?」と。
ふと気がつくと、運転手は普段使う道を外れて、違う道を走っていた。
「この道、どこだろう?」
私は心の中で不安が膨れ上がり、再度運転手に尋ねた。
「すみません、この道を通っているのは初めてですけど、もしかして道を間違えましたか?」
運転手は一度も振り返らずに、冷静に言った。
「いや、この道の方が早いんです。」
その言葉に、私は心の中で「本当に?」と疑念が湧き、ますます不安になった。
ついに、運転手は私の家の近くに着いた。そして、そこで意外な提案をしてきた。
「もしお金に困っているなら、5000円貸してあげることもできますよ。」
私はその言葉を聞いて、驚愕した。
「そんな親切なことをしてくれるなんて…でも、どうして?」と心の中で考えた。
「もし借りたお金を返せなかったらどうしよう?」と、すぐに不安が頭をよぎった。
その瞬間、私は思わず言った。
「その…すみません。もしお金を借りることになったら、私の運転免許証を担保にさせてください。」
その提案に、運転手は笑顔で答えた。
「免許証を担保にする必要はありません。僕はあなたを信じていますから。」
その言葉に、私は驚きと感動を覚えた。
本当に信じてくれているのか?でも、そう言われると、私の中で信頼感が少しずつ芽生えてきた。
次の日、私は約束通り運転手にお金を振り込んだ。
「ありがとうございました。無事にお金を借りたこと、そして信じてくれたこと、本当に感謝しています。」
そしてその後、運転手から返信が来た。
「心配しないでください。あなたを信じます。お金も大丈夫です。」
その言葉に、私は再び心が温かくなり、深い感謝の気持ちが込み上げてきた。