朝の都内、いつも通りの通勤ラッシュ。普段のように混んだ電車に揺られて、私は仕事に向かっていた。周りはいつものようにぎゅうぎゅうで、立っているのがやっとの状態だった。そんな中、突然耳に入ってきたのは、女性の叫び声だった。
「赤ちゃんがいるんです!潰さないで!赤ちゃんが!」その声が車内に響き渡った。見ると、どうやらベビーカーに赤ちゃんを乗せたお母さんが、周囲の乗客に向かって叫んでいた。しかし、その叫び声が響くほど、車内は超満員で、誰もが動けない状況だった。
その母親が、他の乗客に必死に叫び続けるのを見て、最初は心配になった。確かに赤ちゃんがいるのに、こんな激混みの電車に乗せるのは無理があると思った。しかし、その後の展開は予想外のものだった。
母親の声がだんだん大きくなり、「押さないで!赤ちゃんが!」と叫ぶ度に、私はその場の異常な空気に気づかされていた。周囲の乗客も、なるべくその母親と赤ちゃんを守ろうとし、必死で体を横にしたり、手で押さえたりしていたが、それでも車内の混雑は解消されなかった。
そして、次第にその母親の叫び声は次第に「やめて!赤ちゃんが!」から「なんで譲らないのよ!?」と、乗客に対する怒りに変わっていった。周りの人々はその母親を避けるようにしていたが、あまりにも激しい叫び声に、他の乗客が徐々に反応し始めた。
その時、私は思わず声をかけてしまった。
「こんなラッシュの時間に、どうして赤ちゃんを乗せているんですか?他の人にも迷惑ですし、赤ちゃんも危険です。」
すると、母親は一瞬びっくりした顔をした後、すぐに顔を真っ赤にして言い返してきた。
「私だってこんな時間帯に乗りたくないわよ!でも、どうしようもないでしょ!?」
その瞬間、車内はさらに異様な空気に包まれた。周囲の乗客が私を見て、どうするんだろうと思っている様子だった。言葉が強くなり、母親は我を忘れたかのように叫び続けた。
その後、私の仕事道具がバッグの中に入っていたのだが、混雑の中で周りの人が押してきたため、私のバッグが圧迫され、道具がベコベコになった。私は怒りを抑えきれず、再びその母親に向かって言った。
「これ、私の大事な仕事道具なんですけど!あなたの赤ちゃんを守りたい気持ちは分かりますが、それで私の大切なものが壊されているんです!」
母親は少し黙り込んだが、すぐにまた反論してきた。
「そんなの関係ないでしょ!私は赤ちゃんがいるんだから、何もかも優先しろっていうの!?あなたが譲り合うべきでしょ!」
その瞬間、車内の雰囲気は最高潮に達した。周囲の乗客が言葉を発する暇もなく、いくつかの人が「おい!ちょっと静かにして!」と言い、車内は完全に修羅場と化した。
その時、車内にいた若い男性が立ち上がり、大声で叫んだ。
「誰もが疲れているんだよ!朝の通勤ラッシュなんて、みんな死ぬ思いで乗ってるんだ!だからこそ、少しの配慮が必要なんじゃないか?」
その言葉がきっかけで、他の乗客たちも徐々に落ち着き始めた。気まずい沈黙の後、その男性が続けた。
「赤ちゃんは守らなきゃいけない。でも、この状況で周りの人に全部押し付けるのは違うだろ。みんなが大変なんだって、少しは考えようよ。」
その後、母親は黙って下車し、電車はそのまま動き出した。私のバッグは壊れてしまったけど、心の中で少しだけスッキリとした気持ちになった。
最終的に、その場でみんなの協力で収まったものの、私はまだ心の中で怒りと悔しさを抱えていた。あんなにも混んだ電車で、赤ちゃんを乗せるのは明らかに無理があったし、周りの人々に配慮することなく叫び続けるのも、やっぱりおかしいと思った。
でも、結局、私の仕事道具が壊れたことに対する怒りと、周りの協力によって何とか収拾がついたことに、少しだけ満足感を感じていた。
今思うと、あの時私がもっと早く反撃しなければ、きっと自分もずっとモヤモヤしていたに違いない。声を上げることが時には必要だと改めて実感した一日だった。