あれ、初めて見た。
満車の駐車場で、堂々と横向きに停めて、ひとりで二枠占領してる小型車。
一瞬、二度見した。
……あ、これ“うっかり”じゃないな。
これは“確信犯”だ。
内心では盛大にツッコミながらも、私は無言。
ちょうどその横に、ギリギリ一台入る細いスペースが残っていたから、ゆっくりバックで駐車。
ハンドルを切りながら思う。
(まあいい。世の中って、だいたい後から帳尻合うから)
エンジンを切って、普通に買い物へ。
——10分後。
戻ってきた私は、思わず足を止めた。
反対側にも一台、車が入ってる。
結果どうなったか。
私の車。
知らない車。
その間に、さっきの“二枠男”。
見事にサンドイッチ。
前後ほぼゼロ。
ドアも開きにくい。
完・全・封・印。
……あら。
その中心人物は、すでに車の周りをぐるぐる回っていた。
表情は、
余裕 → 困惑 → 焦り → 軽くパニック。
わかりやすい。
私に気づいた瞬間、向こうから駆け寄ってきた。
「すみません!ちょっと出られなくて……挪してもらえます?」
声は丁寧。でも目が泳いでる。
私は一度、彼の車を眺め、
次に“さっきの横向き駐車”をもう一度確認して、静かに言った。
「さっき停める時、周りの人のこと考えました?」
一瞬、間。
彼、すぐ反撃。
「いや、満車だったし!空いてなかったし!少しくらい良くないですか?」
ああ来た。
正当化モード。
私は笑わず、怒らず、ただ淡々と返す。
「“少しくらい”の結果が、今ですよね」
彼、言葉に詰まる。
そのタイミングで、隣の車のオーナー(中年の男性)が戻ってきて、状況を一瞥。
「あー……一人で二台分?」
それだけ。
たった一言。
でも破壊力抜群。
周囲にも二、三人集まってきて、
小声で「すごい停め方だね」「これはアウトでしょ」みたいな空気。
彼の態度、ここで急変。
さっきまでの強気は消え、
急にトーンダウン。
「……いや、その……すみません」
はい、崩壊。
私はもう十分だったので、管理事務所に連絡。
スタッフさんが来て、状況確認。
結論。
注意+指導。必要ならレッカー対象。
制度の勝ち。
彼は顔を真っ赤にして車へ戻り、
今度はちゃんと一枠に収まるよう、何度も切り返して停め直した。
その間、誰も責めない。
ただ見てるだけ。
それが一番キツいやつ。
全部終わってから、私は車に乗り込み、ゆっくり出庫。
彼とは目も合わせなかった。
窓越しに見えた背中は、さっきよりずっと小さく見えた。
私は別に復讐したかったわけじゃない。
怒鳴りたかったわけでもない。
ただ、
当たり前のことを当たり前にしてほしかっただけ。
駐車場って、譲り合って使う場所でしょ。
最後に、今日の教訓。
自分勝手は、だいたい自爆で終わる。