博多から東京行きの新幹線「のぞみ」に乗っていた。指定席で座席が確保されているため、快適に過ごしていたのに、突如としてその静かな空間が破られた。
前方から、子供の泣き声が聞こえてきた。しばらくして、その家族が私の席の前に現れた。見た目は普通の家族で、母親が恐る恐る近づいてきた。
「すみません、子供がぐずっていて…席を2つ譲ってもらえますか?」
その言葉を聞いた瞬間、内心で怒りがこみ上げてきた。心の中で『何を言っているんだ?』と思いつつ、冷静を装って返答した。
「どういう意味ですか?ここに4時間立ってろってことですか?」
母親は一瞬困惑した表情を見せたが、すぐに顔を緩めて言った。
「子供が泣いているんです。座らせてあげたいんです。」
その言葉を聞いた私は、冷静に言い放った。
「それはご自身の責任ですよね。」
一瞬の沈黙が流れ、母親は顔をしかめ、舌打ちをした。そのまま車両の間に戻って行ったが、私の中ではその時点で完全に勝利を確信していた。
しかし、その後も驚いたことに、彼女はまた別の乗客に声をかけていた。
まるで、他の人にもお願いすれば座席を譲ってもらえると思っているかのようだった。
その時、私はもう一度気づいた。こうした依存的な態度には断固として立ち向かう必要があると。自分の権利を守るためには、ただ「譲ってあげる」だけでは済まないのだ。
再び彼女が私にやって来た。おそらく他の誰かに断られたのだろう。彼女の表情は少し困ったようだった。
「すみません、やっぱり座りたいんです…お願い、座席を譲ってくれませんか?」
その時、私は少しも迷わず、冷たく言った。
「おいくらをお考えですか?」
彼女は一瞬、目を見開いて驚いた。その後、恥ずかしそうに目をそらし、何も言わずに引き下がった。私の冷ややかな反応に完全に圧倒され、もう何も言えなかったのだ。
その時、私は確信した。自分が正しいことをしていると。そして、それが何よりも大事だと。
彼女が去った後、私は再び自分の席に腰をおろし、周囲を見渡した。彼女の顔には少しの羞恥とともに、私の言葉の重みがのしかかっていたのだろう。
私は、もう何も気にしない。自分の立場を守り、他人に流されないこと。
それが最も大切だと感じた。
その後、列車は順調に進み、私は次の目的地へ向かう。心の中では、小さな勝利の余韻が続いていた。彼女はもう二度と、こんな風に理不尽なお願いを他の誰かにしてはいけないと、心底思っただろう。
私にとって、その一瞬が何よりも爽快だった。自分を守るためには、ただ「優しさ」や「譲歩」だけでは通用しない。時には、こうした強い反撃が必要なのだ。