「“専業主婦は働けないだろ”って言われた5分後、私は給与差押えの手続きを始めた。」
元旦那から届いたLINEは、相変わらずだった。
「最近さ、ちょっときつくてさ」
「養育費、少し減らせない?」
「無理して払っても意味ないしさ、娘のためにもさ」
……出た、“娘のため”。
私はスマホを見たまま、指を止めた。
この人は、本気でそう思ってる。
続けて送られてきた。
「てかさ」
「専業主婦だったお前が、まともに働けてるとも思えないし」
「正直、無理してるだろ?」
その一文で、全部決まった。
私はそのまま返信を打った。
「年収、あなたと同じくらいだけど?」
既読。
……数秒、止まる。
「いやいや、強がんなって」
「見栄張らなくていいって」
「そういうとこ昔から変わってないよな」
ああ、そうか。
この人の中では、私はずっと“何もできない女”のままなんだ。
だったら――もういい。
私は一度、画面を閉じた。
そして、そのまま別のアプリを開いた。
過去の振込履歴。
未払いの月。
減額をほのめかしてきたLINE。
全部、スクショを取って保存する。
――これでいい。
数分後。
私はもう一度、LINEを開いた。
「考えておくね」
そうだけ送る。
「だろ?無理すんなって」
「俺も余裕ないしさ、分かってくれて助かるわ」
……その“余裕ない”の内訳、私は知ってる。
新しい車。
週末の飲み。
SNSに上がってた旅行の写真。
全部見てる。
でも私は、何も言わなかった。
その代わり――
その日のうちに、家庭裁判所に申立てを出した。
翌週。
元旦那の会社に、正式な通知が届いた。
給与差押え。
人事部経由で、毎月自動的に差し引かれる仕組み。
逃げられない。
誤魔化せない。
「おい、ちょっと待てよ」
その日の夜、電話が来た。
出ると、明らかに焦った声。
「なんだよこれ、会社に通知来てんだけど!」
「人事に呼び出されたんだけど!」
「お前、何したんだよ!」
私は静かに答えた。
「何もしてないよ」
「は?ふざけんなって!」
「ただ、“ちゃんと払われる方法”にしただけ」
沈黙。
向こうの呼吸が荒くなる。
「そこまでやる必要あるか?」
「普通に話せばいいだろ!」
私は少しだけ笑った。
「普通に話してたよね?」
「でもあなた、“減らしたい”って言ったよね」
「しかも、“専業主婦は働けない”って」
言葉が詰まる。
私は続けた。
「ねえ」
「“できない”んじゃなくて、“やらなかった”だけだよね?」
――完全に、黙った。
そのあと、何か言いかけていたけど、
私はそのまま通話を切った。
翌月から、養育費は一円もズレずに振り込まれるようになった。
遅れも、言い訳も、何もない。
最初から、こうすればよかっただけ。
スマホの通知を見ながら、私は小さく息を吐いた。
あの人は最後まで、私を見下したままだった。
でも今はもう関係ない。
だって――
“回収される側”が、どっちかはっきりしたから。
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