息子が帰ってきたのは、昨日の夕方だった。
玄関の鍵が回る音を聞いた瞬間、私は思わず手を止めた。
おかえり、より先に頭に浮かんだのは、たった一つ。
――おしりは無事か。
母親としてどうなんだその第一声、と思わなくもない。
でも仕方ない。今回ばかりは、そこが最重要チェックポイントだった。
夫が息子を連れて義実家へ行くと決まった時から、私はずっと嫌な予感がしていた。
大事故ではない。もっとこう、じわじわ削ってくるタイプのやらかし。
育児を「なんとかなる」で乗り切ろうとする人間特有の、あのうっすらした破滅の匂い。
私はそれを知っている。
だから、玄関で息子の顔を見た時、まず安堵した。
元気そうだった。
そして抱き上げて確認した結果、息子のおしりも無事だった。
そこだけは、本当に良かった。
どうやら現地に着いてすぐ、私が夫に「とにかくオムツ買って」と行かせたのが効いたらしい。
義実家では、ちゃんと交換していたようだった。
ちゃんと。
その二文字だけで、私は一瞬だけ夫への評価を上方修正しかけた。
やればできるじゃん、と思った。
思ったのだ。
ほんの三秒ほど。
問題は帰り道だった。
夫は帰路、息子にオムツ一枚で挑んだらしい。
一枚。
私は話を聞いた瞬間、無言になった。
一枚?
それは“予備”ではなく“最後の一枚”である。
しかも相手は赤ちゃん。舞台は新幹線。
その条件でオムツ一枚というのは、挑戦というより賭博だ。
育児でギャンブルするな。
そして当然のように、事件は起きた。
新幹線の中で、息子は盛大に漏らした。
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