私が結婚した年、家は再開発で立ち退きになった。
その代わりに、新しい家が二つ手に入った。
普通なら、子どもたちで分ける話だと思う。
でも違った。
両親は迷いもなく、こう言った。
「これは全部、弟のものにする」
私は一瞬、言葉が出なかった。
「私は?」
そう聞くと、返ってきたのはあっさりした一言だった。
「娘はどうせ外に出るでしょ」
「家は男が継ぐものだから」
その瞬間、自分が“家族じゃない側”に立たされた気がした。
結局、私は何ももらえなかった。
新しい家も、古い家具すらも。
それでも私は何も言わなかった。
期待しても無駄だと、その時に分かったから。
それからの人生は全部、自分で作った。
働いて、お金を貯めて、
自分で家を買った。
親に頼ったことは一度もない。
一方で弟は、違った。
家を二つもらっても、
働かず、遊び、ギャンブルに手を出して、
生活はどんどん崩れていった。
それでも両親は何も言わなかった。
むしろかばっていた。
「まだ若いから」
「そのうちちゃんとする」
そう言い続けていた。
そして今。
両親は年を取り、体を壊した。
病院代もかかる。
介護も必要になる。
その時になって、弟は言った。
「無理だよ。面倒見れない」
あっさりだった。
逃げた。
そして両親は、私のところに来た。
久しぶりに会った顔は、明らかに弱っていた。
「お願いだから、面倒を見てほしい」
「昔のことは水に流して」
そう言われた瞬間、
胸の奥で何かが冷たく固まった。
私は静かに聞いた。
「どうして私なの?」
答えはなかった。
ただ、黙っているだけだった。
私ははっきり言った。
「私は外の人間なんでしょ?」
あの時言われた言葉を、そのまま返した。
両親は言葉を失った。
私は続けた。
「家も、お金も、全部弟に渡したよね」
「私は何ももらってない」
「その時点で、もう答えは出てたんじゃない?」
沈黙が続いた。
泣いていたけど、もう何も響かなかった。
私は冷たく言い放った。
「面倒を見るかどうかは、私が決めること」
「でも少なくとも、“当然”みたいに頼まれる筋合いはない」
それだけだった。
都合のいい時だけ家族は成立しない。
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