コインパーキングでのことでした。
私が車を動かしていた時、相手の車の角に付いていたカーブミラーが当たり、ボディに小さなへこみができてしまいました。
見たところ、へこみはだいたい10センチほど。
もちろん、こちらに過失がある以上、逃げるつもりなんてありません。
私はすぐに警察を呼び、保険会社にも連絡しました。
相手にもきちんと謝りました。
その時点では、修理費は高くても10万円前後だろうと思っていました。
ところが後日、出てきた見積もりを見て、私は固まりました。
修理費、8万5千円。
レンタカー代、17万6千円。
合計、26万円。
思わず二度見しました。
「え、へこみよりレンタカー代の方が高いの?」
相手は美装関係の仕事をしている人で、その車は仕事用だと言います。
だから修理中にレンタカーが必要だという説明でした。
そこまでは分かります。
仕事で使う車なら、代車が必要になる場合もあるでしょう。
でも、10センチほどのへこみで、レンタカー代だけで17万6千円。
修理費の倍以上です。
さすがに、そのまま「はい、払います」とは言えませんでした。
しかも、チューリッヒに確認すると、保険を使った場合の保険料アップは3年間で約6万円とのこと。
つまり、もし本当に26万円全額が妥当なら、保険を使った方が明らかに現実的です。
でも逆に言えば、相手の請求が本当に妥当なのかを確認しないまま、自腹で払うのは危険だと思いました。
私はその場の空気に流されませんでした。
「仕事用なんで」
「レンタカーが必要なんで」
そう言われても、必要なものと、言われたものを全部そのまま払うことは別です。
私は写真を整理しました。
へこみの範囲。
実際に傷がある場所。
反射で擦っているように見えるだけの部分。
修理見積もりの内容。
レンタカー代の金額。
修理期間。
全部まとめて、保険会社に送りました。
そしてこう伝えました。
「事故の責任は認めます。ただし、レンタカー代の必要性と金額の相当性を確認してください」
ここから空気が変わりました。
相手は最初、少し強気でした。
「仕事の車だから必要です」
「この金額で出ています」
「こちらも困っています」
でも保険会社が間に入った途端、話は“感情”ではなく“根拠”になりました。
なぜその日数が必要なのか。
なぜその車種のレンタカーなのか。
修理に本当にその期間がかかるのか。
業務に代替手段はないのか。
保険会社が一つずつ確認を始めると、相手の勢いは少しずつ落ちていきました。
私は別に、払いたくないわけではありません。
こちらがつけた傷なら、きちんと責任は取ります。
でも、事故をきっかけに必要以上の費用まで全部乗せられるのは違います。
何より、こちらが素人だからといって、見積もりを出された瞬間に黙って払う必要はありません。
数日後、保険会社から連絡が来ました。
「レンタカー代については、内容を再確認しています」
その一言で、私はかなり安心しました。
やっぱり、疑問に思った感覚は間違っていなかったのです。
最終的に、費用は再調整される流れになりました。
少なくとも、最初に出された26万円をそのまま私が飲み込む話ではなくなりました。
相手も、最初のように一方的な言い方はしなくなりました。
あれほど強く「仕事用だから」と言っていたのに、保険会社が確認を始めると、急に言葉が慎重になったのです。
その時、私は心の中で思いました。
事故の責任を取ることと、言われた金額を全部そのまま払うことは違う。
謝るべきところは謝る。
直すべきところは直す。
でも、納得できない費用はきちんと確認する。
それが大事なんだと。
もしあの時、焦って自腹で26万円を払っていたら、きっとずっとモヤモヤしていたと思います。
「本当にあの金額でよかったのかな」
「レンタカー代、あそこまで必要だったのかな」
そんな後悔が残ったはずです。
でも私は止まりました。
写真を残して、明細を確認して、保険会社に任せました。
結果、話の流れは完全に変わりました。
私は逃げません。
責任も取ります。
でも、10センチのへこみで26万円の提款機になるつもりはありません。