大阪市内、車を走らせること十数分。街中の駐車場はどこも満車。俺は心の中で毒づきながら、何度も何度も同じ道をぐるぐる回った。「まったく、なんでこんなに停められへんねん…!」叫びたい気持ちをぐっと抑え、ハンドルを握る手に力を込める。
結局、見つけたのは小さな角の、線も引かれていない場所。背に腹は代えられん。俺の仕事は複合機の配送だ。重量は2トン級、少しでも遠くに置くわけにはいかない。ここしかない――仕方なく、息を整え、車を停めて荷物を搬入した。
「やっと終わった…」疲れで肩が落ちる。汗でシャツはびっしょりだ。だけど、次の瞬間、目に飛び込んできたのは車のフロントガラスにペタリと貼られた一枚の紙――違反駐車の告知。
俺はその場で立ち止まり、頭の中で計算した。
「え、まさか……今、たった数分でこんなことされるんか?」
心臓が跳ね、怒りが全身を駆け巡る。大阪市内でも、こんな一瞬で貼られることなんて、まずないはずだ。俺は仕事で来てるんだ。満車の駐車場のせいで仕方なく停めたんだ。
なのに、まるで俺が悪者みたいじゃないか。
「人間ちゃうやん…!」思わず笑いながらも、拳を握る。
怒りのままスマホを取り出す。周囲の車も、隣の駐車スペースも全部満車だ。写真を撮り、動画を回す。荷物を運んだ証拠も残す。俺の行動は決して違反じゃない。だが、目の前の貼紙は無慈悲だ。
写真と動画を、配送仲間や同業者のSNSグループにアップした。「見てくれ、これが現実や。仕事で困ってる人間に対して、こんなことがあるんやぞ!」
投稿はすぐに反響を呼んだ。コメントが飛び交い、共感の嵐。「配送業の現場って、こんなに大変なんですね」「市の規則も仕事現場の現実を考えろよ」――怒りだけじゃなく、みんなの理解が俺の背中を押す。
俺はそのまま、市の担当窓口に連絡した。動画と写真を提示し、現場状況を説明する。「駐車場がすべて満車だった」「複合機の搬入が必要で、近くに置かざるを得なかった」理路整然と訴える。
数時間後、返信が来た。「監視映像を確認し、貼紙は撤回とします」
思わずガッツポーズ。やった――俺の怒りが勝った瞬間だ。仕事の正当性が認められ、冤罪が晴れた。
仲間たちはSNSで祝福のコメントを連投し、俺の投稿は一気に拡散された。「維権英雄」「仕事の正義を貫いた男」と揶揄混じりの称賛もある。
その後、俺は汗だくのシャツのまま、笑顔で荷物を完了させ、車に戻った。もう心の中は爽快そのものだ。大阪の街中で、正義は勝つ。
「仕事する人間に対して、理不尽なことしてもあかんのや」
そう心の中でつぶやきながら、俺はアクセルを踏み込む。車窓から差し込む夕日が眩しく、街の喧騒も、俺の勝利の余韻も、一瞬にして光の中に溶け込む。
今日の俺は、仕事の正当性を守り抜いたヒーローだ。たった数分の戦いで、勝利を手に入れた。大阪市内の路上で、俺の心は自由になった――いや、勝利で満たされた。