急いでトイレを借りようとコンビニに駆け込んだ瞬間、目に飛び込んできたのは大きな文字だった。
「当店 トイレの利用はできません」
私はその場で足が止まった。
最初は、正直少しだけ思った。
え、使えないの?
コンビニなのに?
でも、すぐ横に置かれていた貼り紙を読んで、文句なんて一瞬で消えた。
そこには、こう書かれていた。
トイレ内において、信じられない用の足し方をする方がいます。
清掃するスタッフの身にもなってください。
お客様には大変ご不便をおかけしますが、当面の間トイレを閉鎖します。
……読んだ瞬間、怒りが込み上げた。
店に対してじゃない。
そのトイレを壊した、ほんの一部の非常識な人間に対してだ。
このコンビニは、近所ではけっこうありがたい存在だった。
近くで働く人。
配達中の人。
子どもを連れた親。
高齢者。
急にお腹が痛くなった人。
みんなが「もしもの時」に助けられていた場所だった。
私も何度か助けられたことがある。
だからこそ、あの「利用できません」の文字が余計に重く感じた。
トイレが閉まっただけじゃない。
誰かの身勝手で、みんなの安心が一つ奪われたのだ。
たぶん、やった本人は何も考えていない。
「どうせ店員が掃除するだろ」
「自分の家じゃないし」
「バレなきゃいい」
そんな軽い感覚だったのかもしれない。
でも、その後始末をするのは誰なのか。
床を拭くのは誰なのか。
吐き気をこらえながら掃除するのは誰なのか。
そして本当にトイレを使いたかった人が、どんな思いで引き返すのか。
そこまで想像できない人間が、公共の場所を平気で壊していく。
私はレジの店員さんを見た。
いつも通りに商品を並べ、会計をして、忙しそうに働いていた。
でも、あの貼り紙を書いた人の気持ちを考えると、胸が痛くなった。
怒りを通り越して、もう限界だったんだと思う。
本当なら、お店だって閉めたくなかったはずだ。
「ご自由にお使いください」と書いてあるくらいだから、最初は善意で開放していたのだと思う。
でも、その善意を踏みにじる人がいた。
一人か二人か、少数なのかもしれない。
けれど、その少数のせいで、多数の普通の人が不便を受ける。
まじめに使っていた人。
きれいに使っていた人。
本当に困っていた人。
その人たちの扉まで、まとめて閉ざされてしまった。
私はその場で、貼り紙の写真を撮った。
ただの怒りの投稿にしたかったわけじゃない。
でも、これは見てもらうべきだと思った。
「コンビニが不親切」なんじゃない。
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