「空いてるんだから、停めてもいいだろ」
その一言を聞いた瞬間、私は完全に覚悟を決めました。
ここは、私が毎月22,000円を払って借りている月極駐車場です。
白線の中には、きちんと私の契約番号が書かれています。
なのに、その男の車は、まるで自分の場所みたいな顔で、またそこに停まっていました。
これで三回目です。
一回目は、まだ我慢しました。
「ここは契約駐車場です。無断駐車はやめてください」
そう書いた紙をワイパーに挟みました。
翌朝、その紙は地面に落ちていました。
しかも、くしゃくしゃに丸められていました。
二回目は、さすがに警察に連絡しました。
でも、車の持ち主は現れませんでした。
警察官には、こう言われました。
「私有地内のトラブルなので、基本的には民事になります」
その言葉を聞いた時、正直、悔しくて仕方ありませんでした。
私は毎月お金を払っているのに。
私は契約しているのに。
勝手に使った側が、顔も出さずに逃げれば終わり。
そんなの、あまりにもおかしいと思いました。
そして三回目の朝。
出勤しようと駐車場へ向かった私は、足を止めました。
また、あの白い車が停まっていたのです。
しかも、前より堂々と。
まるで「どうせ何もできないだろ」と言っているようでした。
私はその場で深呼吸しました。
怒鳴るのは簡単です。
でも、それでは相手と同じ土俵に立つだけです。
だから今回は、感情ではなく、記録で動くことにしました。
まず、車のナンバーを撮りました。
停まっている位置を撮りました。
時刻が分かるように、スマホの画面も一緒に撮りました。
そして、家に戻って契約書を取り出しました。
車位番号、契約期間、月額料金。
全部、写真に残しました。
そのうえで、管理会社に連絡しました。
「同じ車が三回目の無断駐車です。今回は現場で対応したいです」
電話口の担当者は、少し間を置いてから言いました。
「記録は残っていますか?」
私は答えました。
「全部あります」
すると担当者は、すぐに現場へ来てくれることになりました。
その後、私は車輪にロックをかけました。
もちろん、傷がつかないように位置を確認し、写真も残しました。
私がやったのは、相手に仕返しをするためではありません。
これ以上、勝手に逃げられないようにするためです。
しばらくして、男が戻ってきました。
遠くからでも分かるくらい、不機嫌な顔でした。
そして、自分の車のタイヤを見た瞬間、怒鳴りました。
「おい!何してんだよ!」
私は静かに答えました。
「ここは私の契約スペースです」
男は鼻で笑いました。
「空いてたから停めただけだろ」
その言い方で、私ははっきり分かりました。
この人は、悪いことをしたと思っていない。
むしろ、注意するこちらを面倒な人間だと思っている。
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