お母さんが緩和ケア病院に入ってから、
メールの返信が少しずつ変わっていった。
最初は気のせいだと思っていた。
でも、違った。
前のお母さんは、
もっと長い文章を送ってくる人だった。
「今日は寒いからあったかくしてね😊」
「ちゃんと食べてる?」
どうでもいいテレビの話とか、
近所の猫の話とか。
絵文字もたくさん使っていた。
でも、病院に入ってから、
少しずつ短くなっていった。
漢字が減った。
絵文字が消えた。
返信も遅くなった。
「きをつけてね」
「たべてる?」
それを見るたび、
胸がギュッとなった。
ああ、しんどいんだろうなって。
でも本当に怖かったのは、
別のことだった。
“次、会える保証がない”こと。
仕事の都合で、
どうしても面会に行けない日があった。
その夜。
急に怖くなった。
もし、このまま——
もう会えなかったら。
そう考えた瞬間、
息が苦しくなった。
私は慌ててスマホを開いた。
「お母さんに会いたい」
送ったあと、少し後悔した。
こんなこと送ったら、
困らせるかもしれない。
返事なんてできないくらい、
苦しいかもしれない。
でも数分後。
スマホが震えた。
「おかあさんも、あいたい」
たったそれだけ。
漢字もない。
短い文章。
でも、その文字を見た瞬間、
涙が止まらなくなった。
お母さん、しんどいはずなのに。
痛いはずなのに。
それでも、
一文字ずつ返してくれたんだって思った。
それからも、
私は何度も弱音を送った。
「ひとりで不安だよ」
すると返ってきた。
「だいじょうぶよ」
また短い。
でも、その短い言葉に、
全部入っていた。
大丈夫じゃないのは、
本当はお母さんの方なのに。
最後まで、
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