帰宅したとき、違和感があった。
玄関のドアの隙間に、
透明なテープが挟まれていた。
朝は、絶対になかった。
「これ、誰か触ってるよね?」
そう言った瞬間——
義母は笑った。
「また被害妄想?」
「だからあんたはダメなのよ」
完全にバカにされた。
否定されるのは慣れてる。
でも今回は、違和感が消えなかった。
毎日、同じ場所にある。
しかも微妙にズレている。
誰かが、触っている。
でも私は何も言い返さなかった。
どうせ信じない。
説明するだけ無駄。
だったら——
証拠で見せるしかない。
私は黙って、小さなカメラを設置した。
ドアの外が映る位置に。
そして数日後。
夜、映像を確認したとき——
息が止まった。
そこに映っていたのは、
知らない男じゃなかった。
義母だった。
ドアの前に立って、
あのテープをそっと触っている。
一瞬、意味が分からなかった。
でも、そのあと。
画面の奥から、男が現れた。
義母が振り向いて笑った。
そして——
二人でそのまま外へ消えていった。
全部、つながった。
あのテープは、
私が家にいるかどうかを確認するための“合図”。
つまり——
私がいない時間を狙って、
外で会っていた。
あのときの言葉も。
「気にしすぎ」
「だからダメなのよ」
全部——
バレないためだった。
怒りより先に、冷静になった。
私はその映像を保存した。
そして次の日。
何も言わず、義母の前にスマホを置いた。
再生した。
数秒後——
義母の顔色が変わった。
「……これ、何?」
分かってるくせに。
「これ、どういうこと?」
逃げようとした。
でも逃がさなかった。
沈黙。
長い沈黙。
そして——
小さくため息をついた。
「……あの人と、会ってたの」
視線を落としたまま、続けた。
「お父さん、もういないし…」
「ずっと一人で、寂しくて」
「ただ、誰かと話したかっただけなの」
正直、すぐには受け入れられなかった。
だって——
あんなふうに私をバカにして、
全部“私のせい”にしてたのは事実だから。
でも義母は、最後に言った。
「……疑ってごめん」
初めてだった。
義母が、自分から謝ったの。
あの強気な人が。
少しだけ、空気が変わった。
でも——
全部が許せたわけじゃない。
ただ一つ、分かったことがある。
“違和感”って、間違ってない。
見逃さなかった人だけが、
真実に辿り着ける。
あのテープがなかったら。
私は、ずっとバカにされたままだった。
これ、どう思う?
許せる?
それとも——無理?
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